対局中

□Vanilla
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口の中が甘ったるい
そう思いながらひと舐めする



『甘い・・・』



進藤との対局が終わり、棋院の休憩室でアイスを頬張る


「塔矢、今日の対局はどうだった?俺は右辺を守り過ぎたのかな」


『そうだな、進藤はここの地を固めたかったんだろう?』


「うん、でも上手くいかなかった」


『誰と打ってると思ってたんだ。他ならぬ僕だ、君を知り尽くしている』


「・・・げ、嫌なやつ」


そう言いながら、又アイスをひと舐めした


「塔矢さ、そういえば最近そのバニラアイスばっかりじゃね?俺は今日はメロン」



『・・・そうだな』



「それ、そんなに上手いのか?」



『・・・どうだろう、甘ったるい』


そう、甘ったるい。でもこの匂いを感じると何かが弾けたように力が湧いてくる


「・・・ふーん、変なやつ」



『君に言われたくない』







ーー次の対局日ーー



休憩室にはまた、バニラのアイスが用意されていた



「和谷〜、疲れた〜」


『お、進藤じゃん!これお前の?』


そう言ってバニラアイスを指さす


「ううん、塔矢の」


『・・・へ〜、アイツこんな甘い物食べるんだな』


「な、ビックリ。そういうの好きそうじゃないのに」



『好きな女の子の影響だったりして〜』


「まさか・・・はは。塔矢が?ナイナイ!!絶対ナイ!」



『・・・だな!』




『話し中悪いが、失礼するよ』



「『・・・と、塔矢っ!!』」


げっ・・・とひと声上げて、和谷は退出した。どうやら和谷は未だに塔矢が苦手らしい


塔矢はそんな事は微塵も気にせず、アイスを冷凍庫の棚から徐ろに取り出し、舌から迎えに行く



「お前、何か舐め方が・・・」



『舐め方ってなんだ、進藤』


「アイス食べる顔じゃねぇよ。何か怖い」


『・・・そうかな』



「今度、俺もそれにしよっかな」



『・・・影響だよ』


「ん?・・・何」


『好きな子の匂いがバニラの香りなんだ』


「・・・・・・へぇ、お前好きな子いるんだ。」


俺なんてまだ、あかりと幼馴染みのままなのに・・・ん?、何で今あかりが浮かんだんだ・・・



「好きな子って事はまだ片想いなのか?」


『・・・うん、強情で困ってる』


「へぇ〜塔矢を困らせるなんて、そいつすげーやつだな!」



『何れは・・・』


「・・・ん?」


『何れは手に入れるよ、本物を』



そう言って、またバニラをひと舐めした










Fin


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