対局中
□可愛い人
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『塔矢くん、ずっと好きでした』
もう何度目だろう、こうして身も知らない人から突然声を掛けられるのは、、
「ありがとう」
『あの、私と付き合って下さい』
嗚呼そうか、この子はただ僕と打ちたかったんだね
「いいよ、どこでする?」
『す、する???!』
「僕の知ってる所でいいかな」
『えっ、そんなまだ私・・・!』
(塔矢くん、積極的ーっっ!!)
「うん、だから取り敢えず付き合うよ!君が知らない場所が嫌だと言うならば部室でやろう」
そう言って囲碁部に連れて行かれそうになる
『流石にまずいよ!部室なんて!誰が来るか』
「別に恥ずかしい事じゃない。裸になる訳ではあるまいし・・・早くしよう」
そう言って元気にさくらの手を引っ張っていく
『そうなんだ、塔矢くんは制服のまま系?・・・そういうタイプなんだ』
「・・・?・・・うんまあ、今はそうかな。でも父は勤しむ時はいつも着物だよ。着物っていうのも風情があって僕は好きかな」
『えっ・・・クルクルとかしちゃうんですか?何か大人過ぎて、私もう会話についていけない・・』
「・・・ん?そうだね大人だと思うよ。僕の父がその道のプロなのは知ってるよね?」
『えっ!!そうだったの?凄い職業だね・・・テレビにさ、してる所が大画面で映るのには抵抗がなかったの?』
「うん、父は偉大で誇らしいよ」
『そんなご立派なモノをお持ちなんですか、お父様。是非、お父様ともお手合わせ願いたいです。』
「どうかな・・・忙しいから。毎日家に沢山で押し掛けてくるんだ。」
『わぁ・・・お家で多人数で?凄い』
「緒方さんですら、弟子にして下さいと、塔矢門下になってから一番弟子だから」
『門下とかあるの?本当に大規模なんだね・・・私も入りたい』
「棋力はどれくらい?」
『気力?うーん、そこら辺の人よりは塔矢くんとしたい気持ちが強いよ・・・ふひっ』
「凄い自信だね、僕を追い詰められたら父に頼んでみよう」
『わ、お父様と?是非!』
「あっ、そうだ!君の名前は?」
『さくら』
「可愛い名前だね。さくらちゃん、君とやるのが楽しみだよ」
『もう、卒倒しそう』
「着いたよ!」
(嗚呼、いよいよあの塔矢君と・・・塔矢君とぉぉぉぉ)
『ん・・・?へ・・・?どこ?』
「囲碁サロンだよ。僕の父が経営してるから、今日は500円は要らないからね。さあ、打とう!」
『・・・え、そっち?』
「・・・・・・?」
『今日は帰る!さよなら!』
こんな日もあるよね
碁会も誤解も甚だしい・・・
こんなに会話が縺れても、、
まだ女の子の言葉の意味を理解していない塔矢アキラ君でした
Fin
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