対局中
□White day
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夫である塔矢アキラは、、
一ヶ月前に、溢れんばかりの紙袋を5袋程持ち帰ってきた
『ただいま』
「おかえりなさい、アキラさん」
そう言って出迎えると、アキラさんの顔は殆ど紙袋で見えなくなっていた
『市河さんに車で送って貰ったんだ』
「そうですか・・それで、その紙袋は?」
『これは・・・』
分かってますよ、それは女性ファンからのバレンタインの贈り物ですよね
『・・・もう無いと思ったんだけど、昨日より多く出待ちの方がいて捕まってしまったんだ・・』
有難い事だが、と付け加え・・・アキラさんは苦笑いする
「そう・・・ご飯にしますか?それともお風呂にします?」
何事もなかったように聞き流して笑顔で取り繕った
こんな事で嫉妬心を剥き出しにしていては囲碁棋士の妻は到底努まらないだろう
そう思い直し、エプロンをギュっと握り締める
『お風呂にするよ』
そう言って、紙袋をドサっと床に置き冷えた体でギュっと抱き締められた
畳の部屋にいたからか、い草の香りがスーツに染み付いている
その香りを間近で嗅ぐと、何故か胸がギュっと苦しくなった
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今日の献立は、、
焼き魚、茄子の煮びたし、根菜類のお味噌汁、だし巻き玉子、鶏つくねの炊き込みご飯
それを順に温めて出し、私はただアキラさんが食べ終わるのをじっと待っていた
「アキラさん・・・このGODIVAのチョコとマフラー、ネクタイ、旅行券、商品券のお返しはどうなさるおつもりですか」
『・・・ああ、考えてなかった。悪いけどさくら、デパートでお返しを見繕ってはくれないか』
「・・・・・・はい・・・分かりました」
事も無げに話され静かに返事をする
明日にでもデパートに行って散財しまくって気分転換しようかな、、
そう心の中でそっと呟いた
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