学園物語
□選んだ道
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「まぁ、座って?」
自分はベッドの上で胡座をかきながら、足元のクッションを顎で指す。この間松倉が気に入ってた、抱き心地のいいクッションだ。
「ああ、うん。あ、コレ。」
ムスッとしたままこっちに近付いてきて、コンビニの袋を俺に向かって差し出した。受け取って中を覗くと、スポーツ飲料水とバニラのアイスが3つ入っていた。
ふっと口元が緩む。
俺はベッドから降りて、松倉の隣に、少し距離を空けて座った。
「雨、止んでた?」
「…うん。」
「そっか。ん。」
手にしたアイスを松倉に差し出すと、松倉と目が合った。
不機嫌に混じって、不安というか、いっそ怖がってるような顔付きで俺を見ている。少し開いた唇で何か言おうとして、でもそれを飲み込んでしまった。
そっか、俺のせいだよな。
ここ最近、自分の気持ちにいっぱいいっぱいで、松倉の気持ちを考える余裕なんてなかったかもしれない。コイツが人一倍気にしいなのはわかってたのに。
「俺、これ好き。」
俺は安心させてやりたくて、なるべく自然にやんわり笑いかけた。すると松倉も少しだけ口角を持ち上げて笑い、手を伸ばしてアイスを受け取った。
「知ってる。」
久しぶりに真正面から受け止めた松倉の笑顔は眩しくて、俺は思わず息を呑んだ。