学園物語

□選んだ道
2ページ/6ページ

「まぁ、座って?」

自分はベッドの上で胡座をかきながら、足元のクッションを顎で指す。この間松倉が気に入ってた、抱き心地のいいクッションだ。

「ああ、うん。あ、コレ。」

ムスッとしたままこっちに近付いてきて、コンビニの袋を俺に向かって差し出した。受け取って中を覗くと、スポーツ飲料水とバニラのアイスが3つ入っていた。

ふっと口元が緩む。

俺はベッドから降りて、松倉の隣に、少し距離を空けて座った。

「雨、止んでた?」

「…うん。」

「そっか。ん。」

手にしたアイスを松倉に差し出すと、松倉と目が合った。

不機嫌に混じって、不安というか、いっそ怖がってるような顔付きで俺を見ている。少し開いた唇で何か言おうとして、でもそれを飲み込んでしまった。

そっか、俺のせいだよな。

ここ最近、自分の気持ちにいっぱいいっぱいで、松倉の気持ちを考える余裕なんてなかったかもしれない。コイツが人一倍気にしいなのはわかってたのに。

「俺、これ好き。」

俺は安心させてやりたくて、なるべく自然にやんわり笑いかけた。すると松倉も少しだけ口角を持ち上げて笑い、手を伸ばしてアイスを受け取った。

「知ってる。」

久しぶりに真正面から受け止めた松倉の笑顔は眩しくて、俺は思わず息を呑んだ。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ