学園物語

□昼下がり
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海人が後ろのドアから出るか出ないかのタイミングで、前の方から戻ってきた松倉が見えた。

「海人、いないんだけど!ちょ、やばいって。今日絶対当たるんだって!」

焦ってる、焦ってる。眉毛が八の字になってるし。困ってる顔がかわいいと思う俺って、S?

「あーじゃあ、俺の貸そっか?」

俺は机の中から英語の教科書と一緒に、松倉のノートを取り出した。

「あれぇ?これってもしかして?」

白々しく俺が素っ頓狂な声を出すと、松倉が期待通りの反応をする。

「なに?あ!それ俺のじゃん!それだよ!てか、なんでちゃかが持ってんの?」

目をクリクリさせて、?マークを浮かべながら俺の手元を指差す松倉。

堪えきれなくて、ぶふっと吹き出して笑う俺を見て、今度は口を尖らせた。

「ちょ、なんだよ〜返せって!」

と言って俺の手からそれを奪い取ると、松倉はペラペラとノートを捲り出した。

なんで俺が持ってたのかはもういいんだ⁉

そんなことより今はなんか必死らしい。まぁ松倉の英語、ヤバイからね。テストで点取れないから、授業で点数稼いでおこうって作戦らしい。

「あーもうわっかんね。これなんて意味だっけ?」

とかブツブツ独り言いいながらおでこに手を当ててる。俯いた顔に前髪が崩れ落ちて、松倉の目元を隠した。

俺は自分の席に横向きに座り、松倉の机に肘を乗せて頬杖をつく。昼下がりの陽に照らされて、オレンジに光る松倉の髪をそこから眺めていた。

キレイだな…

なんて思いながら。


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