松松物語
□本音
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大阪での1ヶ月は本当に充実していた。
舞台では毎公演新しい気付きや学びがあったし、このカンパニーの一員として出来ることをやりきらなきゃって自分を追い込んだ。煌びやかなステージで舞う大きい先輩たちの背中を見ながら、俺たちだってやってやるんだ、追いついて、いつか越えてやるんだって、野心を燃やしてた。
舞台を降りると、カイトは毎晩『まつく』に戻って俺の部屋に居た。それがとてつもなく幸せだった。まるでここが家みたいな、俺らが一緒に帰る場所みたいな、そんな安心感を与えてくれた。ヘトヘトに疲れてるくせに、毎晩のように仕事や夢について二人で語った。自然体で戦友として走っていた頃のように、俺もまつくと接することができた。カンパニーのみんなでご飯を食べに行ったり遊園地ではしゃいだり、大勢の人の中にいても、二人はセットのような扱いだったし、今更ながらやっぱ俺らニコイチだな、なんて感じてた。扱いにくい嫉妬心はあまり表面に出てこなかったし、ドキドキする胸の高鳴りは、舞台で溢れ出すアドレナリンと相まって、自分自身も誤魔化して過ごせていた。