学園物語
□止まない雨
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しばらくの沈黙の後、ふいに海人が俺の頭にポンポンと触れてきた。
え?
思わず箸を止めて顔を上げると、海人の優しい眼差しを受ける。
「あんま気にすんな。お前らは大丈夫だって。」
なにそれ。俺、なんも言ってないし。
意味深な海人の言葉が引っかかった。
「アイツ、なんか言ってた?」
「いいや、なんも。」
「じゃあ何が大丈夫なんだよ。俺は全然大丈夫じゃねぇよ。」
カッコ悪いと思いながらも、俺は顔を歪ませながらそう吐いた。
なんでお前はそんな全部わかってますみたいな顔してさ。ズルいじゃん、海人。
「どうしたらいいか、わかんないよ。」
自分の声が弱々しく響いて、情けなくなった。最悪だ。
俺はいたたまれなくなって、急いで残りの弁当を掻き込んだ。
「ていうかさ、なんなの、アイツ?俺、なんかしたの?マジ、意味わかんねぇ!」
自分の弱さを誤魔化すように、今度は声を少し張って俺は海人に苛立ちをぶつけた。そんな俺に向かって海人は、余裕の笑顔を見せる。
「くら、ちゃかの家知ってるんでしょ?放課後お見舞い行こうぜ。」
「は?やだよ。」
「面と向かって文句言ってやればいいじゃん。なんなんだ、お前って。」
「いや、それもなんか…」
「風邪引いて弱ってるちゃかになら、お前も勝てるかもよ?」
「うっせ!」
「一緒に行ってやるからさ。よし、決まり。じゃ、あとでね。」
「は?え?ちょ、待って」
急な決定に瞬きしている間に、海人はまた俺の頭を軽く撫でて、そのまま立ち上がると自分の教室へと行ってしまった。
俺、行くって言ってないし。
大体何を話せばいいんだよ。俺が何言ったってちゃかは誤魔化すだけだよ。喧嘩にすらならない。
結局俺らはその程度ってこと…?
またモヤッとする。
んだよ、もう。
寂しかったりイライラしたり、すっかりペースを乱されて、結局俺は、午後もずっと主の居ない机を睨みつけて過ごした。