清麿x恵

□赤と朱色のハッピークリスマス
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他愛もない話をしながら歩いているだけでも、2人にとっては何にも変えがたい特別な時間だった。電車で秋葉原から乗り換えてモチノキ駅に着く。

「あら?」

「どうしたの?」

「見て、清麿?」

恵の指さす方向を見るとチロチロと雪が降り始め、何色ものイルミネーションがまるで2人はもちろん、帰り道を行く人々を迎え入れるように輝きを放っていた。

「私、ここでイルミネーション見たの初めてかも!!」

「あぁ。最近できたんだよ。点灯式の時丁度学校の帰りだったんだけど俺も最初見た時びっくりした。それに…」

「それに?」

「…機会があったら恵にも見せたいなって思っていたんだ」

少しだけ照れながら、けれどもしっかりと恋人の見つめて伝える。イルミネーションをキラキラとした目で見つめる彼女は、はしゃぐガッシュとティオを優しい眼差しで見守っていた時とは逆で、新鮮味を覚えた。そしてそんな素顔の恵の姿を独占できることが、優越感とは行かずとも清麿にとっては嬉しかった。

率直に恵も清麿に対しては独占欲が強いくらいで何度も浮気をしているのではという疑念が渦巻いたこともあった。しかし恋愛に鈍感というより不器用な清麿がそのようなことができないことも知っている。

「寒くなったな」

「ご両親もいらっしゃらないのに、お邪魔してご迷惑じゃないかしら?」

「逆。親父とお袋が、泊まりがけで出かける用事あるって言うから、ありがたかった。邪魔者は、多分来ないはずだからな」

邪魔者というのは小学校〜高校までの騒がしいクラスメイトたちのことだろう。それを聞い恵からくすくすと笑い声が聞こえた。

「鈴芽ちゃんもそうだけど、清麿の周りにいっぱい面白い人たちがいるのね」

「騒がしいだけだよ」

「ガッシュ君に当てられて、清麿にも人を惹きつける魅力を身につけたのよ。だって…」

間を空けずにさりげなく、ぎゅっと手を繋ぎ始める。心拍数の上がる清麿にもお構いなしの大胆さ。

「そのおかげで、ガッシュ君たちが帰ってからもこうして2人で一緒にいられるんだもの!」

にっこりとウィンクをして繋いだ手を強く握る。

繋がれた右手を離さないように、夜景に目を遊ばせながらゆっくりと歩き出した。
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