清麿x恵
□ハロウィンパーティの帰り道
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俺の脳内パニックをよそに、元麻布駅に着き電車に間に合った。時計はすでに8時を過ぎている。今日はハロウィンイベントを見に行くために特例で門限を10時にまで延ばしてもらった。
もちろん、恵さんを下宿中のマンションまで送ってから帰ることが条件である。
『恵ちゃんの立場はあんたが1番よく分かってるんだから、ティオちゃんと2人で帰しちゃ駄目よ!?あんなに可愛いんだもの、お祭り騒ぎに便乗した男どもに狙われちゃうから!』
お袋の声が一瞬、頭の中に浮かんだ。
運良く席が空いていたので痴漢と疑われないように、なるべく距離を空けて座った。すると、彼女がすっと近づき耳元でささやいた。
「隣に、来てもいい?」
好きな女の子に言われたら男子が俗に言う‘’胸キュン‘’を起こすシチュレーションに思わずドキッとしてしまった。それも相手は現在進行形で人気を誇るスーパーアイドルである。否応にも心臓が高鳴った。
(でももし痴漢に間違われたら…。)
一瞬ためらっていたが、恵さんは俺の戦友であり、今やたった1人の恋人なのだ。
暴漢どもが来ても武道の心得がある彼女ならやり過ごせるだろうが、彼氏として面目が立たない。万一のことを考えば、四の五の言っている場合ではないはずだ。
「うん…。いいよ!」
「ごめんね、ありがとう。」
「いいよ、謝らなくて。当たり前でしょ?」
隣に移った彼女からは、にっこりと笑みがこぼれていた。
(俺は、彼女の笑顔が好きなんだな。いつ見ても、綺麗だ。)
心の中で実感しながら、スヤスヤと眠るガッシュ達を起こさないように距離を縮めた。
そうこうしてるうちに車掌の声が響く。
「まもなく、神楽坂〜、神楽坂です。」
アナウンスを聞いた彼女がティオの背中を揺すった。
「ほら、ティオ。起きて!マンションに帰るよ!?」
「寝かせてあげよう。仕事も一緒に行ってたっぷり回ったんだ。疲れてるだろうしね。」
恵さんも申し訳なさげな表情をしてはいたが、俺の言葉に安心したらしくふうと一息ついて
「うん、そうしよっか!」
とつぶやいて電車を降りた。