清麿x恵

□ハロウィンパーティの帰り道
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神楽坂駅を抜けて、恵さんのマンションまで歩き出した時、彼女が突然口を開いた。

「遅い時間なのに大丈夫なの?ガッシュ君をお家で休ませてあげなくちゃ…。」

「大丈夫だよ。遅い時間だからこそ、女の子2人きりで帰せないからさ。」

ガッシュもきっと起きていたら

『女性をひとりきりで帰すのは男のすることではないのだ!送っていくべきなのだ〜!!』

などとわめいていたことだろう。恋愛の 概念すらわからない癖をして、こう言ったことには敏感なのだなと心の中で呆れていた。

「さっき料理の感想を聞いた時、清麿君…私の手料理が1番って言ってくれたでしょ?」

「うん。お世辞抜きで本当にそう思ったから。」

俺の返事を聞いた後で、彼女はふうと白い息を吐き、冷えた手をポケットに入れた後まっすぐにこちらを見つめた。

「今日の料理人さんには到底及ばないし、作るものも似たり寄ったりになっちゃってるけど、貴方たち2人がいつも喜んで残さず食べてくれるから、その顔を想像していつも作っていたの。
でもまさかそこまで思ってくれていたなんて、とても嬉しい。」

次の言葉を聞いた瞬間、俺の顔は真っ赤になった。

「一緒に住めていたら、毎日作れるのにな〜って…。思っちゃったこともある。」

(!?)

一緒にって…それって遠回しに結婚を見据えてるってことか!?
ちょっと待て、恵さんと付き合えただけでも奇跡だって言うのに結婚まで到達したらそれこそ世の男子から非難の的だ。
だが、そうなったらいいなと思う自分もいた。

途端、恵さんの目がキラキラと輝いた。彼女は空を眺めている。

「見て、清麿君。すごく綺麗!」

つられて空を眺めると、都会とは思えないくらい綺麗な星がキラキラと輝いていた。同時に北風が吹いている。

風邪をひいて勉強や仕事にさし障ると困ると考え、俺は念のために着ていたセーターをそれとなく彼女にかけた。長袖で生地も温かく厚いものなので手や首元を温めることもできる優れものである。

突然‘’ファサッ‘’という音がしてびっくりしたようだった。

「え…、これって…?」

「よければ、貸すよ?寒くなったからね。」


頬をリンゴのように赤く染めながら

「暖かい。」

と呟いていた。その時の横顔がとても可愛らしくて、携帯電話があったら写真に収めたいくらいだった。

歩いていくうちに彼女の暮らすマンションが見えた。

「ここまでで、大丈夫かな?」

「うん、いつもありがとうね。今日は今までの中で最高の時間だったわ!」

‘’最高の時間‘’か。今まで休みが取れた時に出かけた時も

『楽しかった』

という単語は必ず耳にしたが’‘最高’‘という単語は一度も聞いたことがなかった。喜んでくれたようで、俺はつい心の中でガッツポーズをしてしまった。その後すぐに思い出したかのように、セーターを脱ぎ、綺麗にたたんで手渡してくれた。

「セーター、ありがとうね。とても暖かかった。それと…。」

言いかけたところで一瞬沈黙が流れた。

「清麿君の、優しさもあって二重に温かかったわ!」

ウィンクをしながら、微笑みを向けてくれた。いつもながらこんな台詞に弱いせいか、少し動揺してしまった。

「どうしたの?」

恵さんの声色が心配そうなものに変わった。俺は彼女を安心させたいと思ったし、純粋に思ったことを答えた。

「ちょっと考え事を…ね。」

「何?ほかの女の子のことじゃないよね?」

ふくれたように聞いてくる。ヤキモチを妬かれるということは疑いでもあり、それだけ愛されてるんだなと思った。

「断じてそれはないよ?この戦いが終わったら教えるよ。」

「本当に?」

「うん。またよろしくな!」

「こちらこそ!頑張ろうね!」

彼女の笑顔に送られて、俺はモチノキ町にある家路を急いだ。まずは

『優しい王様』

にガッシュ達を導いて、それと同時進行で

2人がいつまでもずっと幸せでいるためにどうすればいいかを考えているからだ。

(全てを賭けて、この2つを果たそう!)

そう決心した俺の足取りは、さっきより軽くなっていた。



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