清麿x恵

□ハロウィンパーティの帰り道
1ページ/3ページ

==東京都==

今日は10月31日、年に一度のハロウィンで町中が仮装行列で賑わっていた。

元麻布にある「 AVANTI」(アヴァンティ) というイタリアンレストランで夕飯を食べ、30分ほど前に食事を済ませて帰り道を急いでいた。
パートナーであるガッシュが、遊び疲れたのかスヤスヤと俺の背中で寝息を立てている。

「料理、美味しかったわね。清麿君のセレクトは流石だわ。」

横から声をかけたのは、2歳年上の先輩で人気アイドル歌手の大海 恵さんだった。
ガッシュと同じ年くらいの魔物、ティオのパートナーであり、『優しい王様』を目指して共に戦う仲間である。

そして1時間前に想いを伝え合い、正式に恋人になった。

彼女も俺と同じく、ティオを背負って一緒に駅に向かっていた。バレないようにと魔法使いのコスプレに眼鏡をかけるなど対策もバッチリである。
コスプレ姿の彼女はいつにも増して可愛らしく、抜群のスタイルが際立っていた。

(この人の魔法にだったら、かかっても全然悔いはないな…。)

心の中で、そんなことを考えていると

「清麿君、聞こえてるの!?」

恵さんからの大声が飛んだ。俺はハッと我に帰る。話の流れから察するに、何度も質問をしてくれたようなのだが、こちらが考え事に夢中になっていて聞いていなかったようである。

「ごめん、恵さん。ちょっと…。」

「ちょっと…何?」

そういうと彼女は額をぴたっと俺の方にくっつけてきた。秋が終わりに近づき、寒さが厳しくなっている夜だけに、暖かさが伝わってくる。

ちょっぴり顔が赤くなっている自分に気がついた。
何とか平静を保とうとはするのだが、全然うまくいかない。

「恵さんのコスプレを見るの、初めてだったからさ、つい…見とれちゃってて。」

「もう、口が上手いんだから…。料理どうだったって聞いたのに。」

ちょっぴりふくれたように返される。その姿も十分に可愛いなと思った。
でもそれを最後まで言葉に出せている俺自身にも、驚いてしまった。

「俺、 人にお世辞を言えるほど器用じゃないよ。本当に今日の恵さん、いつにも増して可愛いなって…。あと、料理なんだけど…。」


言いかけたところで口ごもってしまう。
身から出たサビとはいえ、さっき揉めてしまった一件を解決させた時には急を要する事態だったので最後まで言い切ったが、どうもこういう場面は苦手だと自分でも自覚があった。

「?」

彼女が返事を待っているかのように、まっすぐ俺を見ながら、首をかしげている。頭の中でもう一度質問を整理して、口を開いた

「どれも本格的でライスコロッケとパスタが特に美味しかったけど、恵さんの手料理には敵わないな〜…って思ったんだ。」

俺は一体何を言ってるんだ?たしかにモチノキ遊園地などへガッシュ達を含めた4人で遊びへ行ったときに毎回弁当を作ってもらってはいたしどれもこれも美味しかったけど、さらっとこんなこと言うなんて質問の答えになってないじゃないか!
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ