short story

□盲愛 〜お騒がせ部長〜
1ページ/1ページ

溺愛。
それは、むやみに可愛いがること。
それは、盲目的に愛すること。


「手塚、何やってるの?」
「いや、今日はみゆきが部活動を見学に来ると話していたから、熱中症対策にと思ってな」


先程から、凍らせたスポーツドリンクに濡れタオル、可愛らしい日傘と折り畳み式の椅子を持ちながら、そわそわしている手塚に、不二は優しく微笑みかける。


「坂本さんならあっちに居たよ」
「なに!?」


手塚が勢いよく振り向くと、そこにはみゆきが立っており、手塚の視線に気づくと笑顔で手を振った。
手塚も控えめに手を振り返す。


「(みゆきが既に来ていたことに気づけなかったとは、不覚だった)」
「(それにしても......)」


「やっぱりみゆきは可愛いな」
「え」
「いや、こっちの話だ」
「クスッ。そうだね」
「おーい、みゆきー!!」
「見学するなら日陰になっているこっちがおすすめだ......と、手塚が言う確率、100%」
「見学するなら日陰になっているこっちがおすすめだ。なに!......乾」
「坂本さんのこととなると、手塚はわかりやすいな」
「また、データ収集か」
「ああ、次のランキング戦も抜かり無しだ」
「フフッ。さすが乾だね」


そんなやりとりを聞きながら、みゆきはコート外をぐるっと回り、手塚に言われた通りの場所へとやって来た。
すぐさま手塚はみゆきへと駆け寄り、熱中症対策グッズを手渡す。


「国光君、ありがとう」
「あ、ああ」
「今日も部活動頑張ってね」
「あ、ああ。ありがとう。............その。今日もみゆきが世界一可愛いと、俺は思っている。以上だ。油断せずに行ってくる」
「行ってらっしゃい!」


みゆきへ笑顔を向けると、手塚は表情をキリリと変え、部員達の前に立つ。


「全員集合」
「「「はい」」」
「いきなりだが、あの場所で今日、部活動を見学している女性は、俺の交際相手だ」
「「「は、はい」」」
「全員、手は出さぬように」
「「「は、はい......」」」
「それから今、みゆきを見て少しでも可愛いと思った者、たるんでいるぞ。グラウンド100周だ。無論、俺も走る」
「「「は、はい!」」」


《盲愛 〜お騒がせ部長〜》

(越前、何故お前は走っていないんだ)
(いや......オレ別に、可愛いと思わなかったんで)
(お前の目は節穴か!追加で150周だ)
(お、鬼......)


end
次の章へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ