夢への導き

□女神と星座の導きによりて 番外編
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星4.5 カノン視点


 突然だが、サガが”恋”をした。
 何を言ってるんだと思うだろ?俺もそう思う。
 確かに初めて魚座の小娘を見た時、美しいと思った。だが、それだけだ。
 まさか、見た目だけで惚れ込んだのか?と思ったのだが、話を聞くと小宇宙を感じ取った事が初めであったらしい。
 なので俺も小宇宙を感じやすい様に、小娘がコロシアムに行く時にバレない程度に近付いてみたのだが……。

 「なんなんだ……あいつ」

 最初に感じたはずの小宇宙が何度挑戦しても感じ取れない。
 本当にヤツは黄金聖闘士候補なのか?
 そう疑うしかなかった。
 だが、他の聖闘士達から疑問視される所は見た事がなかった。
 何故なのか、どうしてっと思う心があったからなのか、あいつが”追いかけっこ”と称した小宇宙コントロール訓練みたいな何か(俺はそう思っている)が始まり、初めて捕まった時、俺は背後から驚かされて勢い余って思い切り転んだ。
 そんな姿を見られてしまい、物凄く恥ずかしくて少しの間、引き籠りになり、サガに心配された。

 「余計なお世話だ!」

 っと、言ったら、

 「弟の心配をして何が悪い!」

 っと、言い返されてしまい、余計に恥ずかしくなって喧嘩に発展した。
 そういう事で、負けた気にさせられた俺は、あいつにし返さなければ気が済まなかったので、何度も挑戦したが、その度に驚かせられて”追いかけっこ”の最後には思わず笑ってしまった。
 まさかこのカノンが、こんな事で心から負けを認める様な事になるとは思わなかった。
 笑ったのは良いのだが、その後、思い切りうなだれた。思わず疲れたと呟いてしまっても仕方あるまい。
 あいつ、あー真名、にはもう、俺がサガではない事がバレていて。……隠している事が馬鹿らしくなってしまうが、それだけは周りに言いふらされる訳にはいかない。隠してきた意味がなくなる。だが、真名がいきなり

 「友達になってください!」

 そう言ってきた。俺はそんな事を言われた事がなかったので驚いた。
 俺の事を知っているのは教皇とサガ、女官長位なモノだ。
 なので、俺は完璧に外との接触をするのが禁止されている。
 そんな俺に真名は俺と友になりたいと言う。
 別に憧れなかった訳ではない。
 本当に良いのか?と自問自答したが、絶対にいけないとわかっている。けれど、心の奥底では”己を知っている人がほしい”と思ってしまっていた。
 許されるだろうか……?この俺に友人など……俺がそんな思考に沈んでいると、

 「私がなりたいからそう言っているのです。なってくれないと……もう一回します?”追いかけっこ”」

 それを聞いた俺は全力で友人になる事の承諾と、”追いかけっこ”をお断りさせてもらった。
 そして、その時に聞いたのだ。何故、双児宮を通る時に小宇宙を感じなかったのか。すると真名は

 「小宇宙を扱う為の自主連みたいなものです。聖域を降りる時と上る時は小宇宙を最小限消してどうすれば早く動けるか実験してたんです。思いのほか楽しかったので、ずーっと続けてました」

 は?

 「いやー、小宇宙を抑えての上り下りは疲れますね。体力作りには最適……どうしました?」

 どうしました?ではない。
 そんな事で俺は今まで苦労していたのか……。

「そんな事とはなんですか。毎日、燃やすのではなく、逆に最小限小宇宙を抑えながら数時間どの位動けるのか、やってみようと思いまして。
 皆さん、小宇宙を燃やす事が出来ますが、普通に過ごす分の小宇宙をも抑えて過ごすのって、結構ツラいですよ。その分体内の小宇宙は解放すれば膨大なモノになりますね。多分」

 「多分かよ!」

 「視覚に頼らず、小宇宙を練りに練って溜めた力を敵に開放し、攻撃するって方法をする人だっていますよ!きっと」

 「納得しかけたのに、最後のはいらんだろう」

 こいつ、大丈夫なのか?頭。
 こんなヤツにサガは惚れたのか……。頭痛がしてこめかみを押さえた俺は悪くないと思う。

 「ふふっ、でも、結構貴方との追いかけっこは楽しかったです。ありがとうございました」

 その時、まだ仮面が出来ていない時だったので、素顔を間近に見ていた俺は真名の”本当に楽しかった”という気持ちが籠った小宇宙を発した真名の笑顔を見た時に……多分、落ちたんだと思う。
 これではある意味サガの事が言えないではないか!!
 正直、仮面無しでの笑顔を見れたのは幸運だったと思う。この二日後位に仮面が出来上がり、真名は素顔を隠して生きる事になった。
 しかし真名、の感覚が変なのか正常なのかわからない事があった、時々

 「この仮面、結構視野が狭まって良い訓練になります」

 とか、言いだしてまさに今の状況を楽しんでいた。それで良いのか、仮面の扱い。
 それにこの間言っていたが、

 「この仮面のおかげで風邪が引きにくくなった気がします!」

 違う、そうじゃない。お前は女を捨てているのだぞ。わかっているのか。

 「わかっていますよ!仮面の利点を探してみただけじゃないですか」

 こいつ、仮面の掟、ちゃんと理解しているのか……?
 大丈夫なのかと心配になった。
 それからコロシアムに訓練する以外は双魚宮に居ると知らされてサガには秘密で真名の所に隠れて通うようになった。バレたらサガのヤツ、もの凄く面倒な事になるぞ。
 サガは、真名に惚れてるから……多分、俺に今まで会っていたからと言ってギャラクシアンエクスプロージョンあたりでも食らわせに来るだろう。
 ……あいつだけには真名を渡したくないな。
 そんな想いがあの時した喧嘩に影響してしまったのだろう。
 サガから訓練していた時の真名の名を聞いた瞬間、思わず覚えたてのアナザーディメンションを放ってしまっていた。もちろん、サガも同じ技を習得している。俺の隙をつき、機転を利かして自身にアナザーディメンションを打ち出し、俺の後ろに移動して、光速拳を繰り出してきた。それを受け流し、俺もサガに光速拳を繰り出すが、ヤツも全て受け流してカウンターを仕掛けてくる。俺も負けじとサガに一発ヤツの顔に食らわした。まさにクロスカウンターの形になる。その後お互いに倒れこんだ。
 まったく、こんな事で嫉妬なんて、恥ずかし過ぎる……。
 その出来事があった翌日、ロドリオ村からの帰りなのか女官二人が歩いている時に聞こえてきた内容に驚いてしまった。
 なんと、真名以外の魚座の黄金聖闘士候補が居て聖域に来るという話を、聞いた。確信を持ちたくてサガが居ない事を確認して、コロシアムでも情報を集めてみた。どうやら本当らしい。近い内に真名に会いに行くか。
 その日から二日たった頃、俺は双魚宮に向かった。この話をする為に。
 もしかしたら、真名が俺と同じ存在になるのでは……っと、思ってしまった俺は真名に聞いてみたい事があった。だから、この話をした時にあまりにもしつこく聞いてしまったので真名にサガとの事を聞かれた。
 今度は詳しく思い出してしまうと、訓練中の真名がーとか、コロシアムで雑兵に親切にーとか真名の話をされて一緒に何か出来た事がなかったから嫉妬し、喧嘩してしまった事、今回の話を持ってきた時に、もしかしたら俺と同じになるのでは?と思っていたから、真名の反応を知りたかったという焦りもあった事など、あまりにも性急過ぎてしまった事で、聞き出しにかかってきた真名に思わず顔に出ていた様で、焦りに焦った俺は思わず逃げ出してしまった。なんと情けない……。
 こんな事、絶対に誰にも言えない。
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