夢への導き

□女神と星座の導きによりて
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「で、俺達が死に懸けで眠りっぱなしの時に、そんなラブラブ合戦なんてやってたとか。姉貴も隅に置けないな?」

 「ら、らぶらぶがっせん……」

 「もう、星矢。ここまで治してもらったんだから良いじゃないか」

 「でもよー」

 現在、私が居る場所はグラード財団の療養所、集中治療室に居ます。
 つい今しがた星矢達をキュアローズで意識が回復する所まで癒しました。
 通常のキュアローズならここまで回復しますが、それ以上だと特別仕様の物でないと無理です。
 何故一気に治してあげられないのかは、まぁ、自然治癒的問題がですね……。
 強くなるならこういう慣れも必要です。

 コンコン

 っと、扉を背にしていたので叩く音に振り向きながら返事をします。
 来ましたね!

 「はい、どうぞ入ってくださいな」

 「失礼します」

 言葉の後に扉が開き、一人の美少女が入ってきました。
 おや、本当はもう一人居ますね。そう扉の隅にいる人物を目を凝らして見つめていると……

 「星矢、瞬、氷河、紫龍」

 「「「「沙織さん!」」」」

 入って来たのは沙織でした。到着が思っていたより早かったですね。

 「お母様」

 「はい、もう大丈夫ですよ。峠はとっくに過ぎてます」

 「ありがとうございます。お母様」

 沙織はにっこりと安心しきった笑顔で私にお礼を言ってきます。
 うおっ!眩しっ!笑顔が、笑顔が眩しいです!どなたかサングラスを持てぃ!
 
 「皆、今回の聖域での戦い、本当にありがとうございました……」

 沙織は四人全員が見える場所に立ってお辞儀をしながらお礼を言います。

 「へへっ、止めてくれよ。沙織さん!俺達は好きでやった事だぜ?」

 「星矢」

 「そうですよ?僕等は沙織さんだからこそ助けたかっただけで」

 「瞬」

 「気にする必要はない。俺達はアテナ……沙織さんを守るのは当然の事」

 「氷河」

 「そんなに気に病まないで下さい。俺達は大丈夫です」

 「紫龍」

 四人のそれぞれの言葉に、気のせいではなければ沙織ったら、ちょっと涙ぐんでいますね。

 「ありがとう……」

 そう言って四人にお礼を言う沙織……萌え。

 「お母様?」

 「おっと、沙織?後ろの彼女の紹介はしなくても良いんですか??」

 涎が出そうでしたが、話題を振って対処します。
 此処で”彼女”の登場ですか。やっと手続きが終わったんですねぇ。

 「そうでした。皆に、特に瞬に紹介したい人が居るのです」

 「え?僕に……ですか?」

 沙織が自身の後ろ、いつの間にか廊下の隅で縮こまってしまっている”彼女”を呼びます。

 「どうぞ、入ってください。”エスメラルダ”」

 「は、はい」

 そう彼女の名前を呼ぶと部屋に入ってきました。
 その彼女の顔を見て驚く四人。

 「は!?」

 「え?」

 「……瞬?」

 「沙織さん、この人は……?」

 四人が戸惑うのは仕方ありません。その入って来た少女の顔つきが瞬そっくりだったからです。
 四人の反応を見て戸惑っていましたが、瞬を見た瞬間、にっこりと微笑んでみせました。一輝から聞いてますもんね。瞬の事。

 「こちらはエスメラルダ。昨日から私付きの女官兼秘書をしてもらうことになりました。それに、この方は一輝の紹介なのですよ?」

 「「「「兄さんの/一輝の!?」」」」

 ここで紹介しているので皆さんお分かりでしょうか?
 そうです。こうして登場したエスメラルダは本来は一輝の修行をしている最中に、一輝の師である……えーっと確かアニメではギルティーって名前でしたっけ?その人の拳の余波で死ぬハズだったんですけど、これが生きてるんですよー。
 そこで皆さんご存知のチート技こと、一輝がデスクィーン島に修行しに行く前に渡したお守りです。
 中身は勿論キュアローズです。花びらではない一輪の花状態。しかも、ちゃんと特別製で私は寝不足と膀胱炎と戦いましたよ。
 ええ、恥てるばやい(誤字にあらず)ではないので白状しました。
 どうやら一輝はエスメラルダを助ける選択をしたみたいですね。
 まぁ、愛しの女性が助かる可能性があるんですからね。当たり前ですね。
 でも一輝ってば沙織から聞いたんですけど、その一軒から極力エスメラルダに近寄ろうとはしないらしいんです。
 でも、他の城戸邸の使用人の人から聞いたんですが、たまに陰から女官と秘書の勉強等を頑張ってるエスメラルダを見守ってる一輝を見かけるとか。
 ……こんな事言いたくないんですけど、一輝よ。
 一歩間違えれば、そういう人の事を”ストーカー”っていうんですよ。
 多分、話しかけたくても出来ないんでしょうね。きっとエスメラルダが死にかけたのは、自分のせいって思ってるかもしれませんし。
 まぁ、一輝が居ないデスクィーン島に残して行くのが心配で、一縷の望みで沙織を頼ったのは英断かと。
 よくやりました、一輝。
 
 「私はデスクィーン島近くの島出身ですが色々あって一輝と出会い、親しくして頂いてました。その縁でアテナ……沙織様に仕える事になりました。よろしくお願いします」

 おや?親しくして頂いて”ました”?過去形ですか。そうですか……。
 一輝め、ちゃんと会ってませんね?今度会ったら言ってやんよ。
 いくら大切な彼女の為に会わない方が良いと思っているでしょうけど、彼女の方は会いたそうですよ?
 ん?何故そう思うのか?さっき過去形で言った時、ちょっと切なそうでしたもの。
 そのくらいは流石に分かりますよー。バカにしない事ですね!

 「彼女はとても優秀で直に仕事内容を覚えてしまいました。勿論、彼女には護身術などは教えていますが、本格的な戦闘をさせるつもりはありません。あくまでも、彼女は私の”女官で秘書”ですから」

 流石、沙織。略してさすさお。え?略しきれてない?細けー事は良いんですよ!
 どんな人にも必ず小宇宙はありますが、扱えるか扱えないかでは違いますからね。エスメラルダにそこまで求めてはいないでしょう。
 そういえば女官、というか侍女といえば私がトリップした頃に連載中だった『セインティア翔』なのですが、学校は本当にあるみたいですね。
 まぁ、私が城戸邸に居る時も幼稚園や学校に行ってましたし、その時にはお友達は……うん。察しってヤツですね。
 えーっと、確か聖闘少女には会った事がないのですが、どうしてるんでしょうね?
 私も詳しくは知らないですけど、一応居るみたいです。
 けれど、邪神エリスはいませんので『セインティア翔』の物語とは違った現実の様ですね。
 ん?何故エリスが居ないかが分かるかって?話でしか知りませんけど子馬座の聖衣を持っているのが『セインティア翔』の主人公、翔子ちゃんのお姉さんの響子ちゃんらしいんですよ。
 今頃ならエリスに依り代として乗っ取られてる頃ですよね?
 なので、私のいるこの世界にはエリスは登場しないという事です。
 ……多分。
 
 「っていうか、皆さん、一輝から聞いてないんですか?エスメラルダの事」

 「う、うん。再会してからも、あまり話もしてなかったですし……あ!でも、真名さんには会いたがってました。なんか、一言お礼を言いたいみたいな事を言ってましたよ?」

 あー、それはまさしくエスメラルダの事ですね。それしか心当たりありませんし。
 ちょっと前位にエスメラルダ本人からお礼を言ってもらってますから、気にしなくてもいいですのにー。
 おや、エスメラルダが瞬のそばに行きますね。
 
 「貴方が瞬さん、ですね?」

 「あ……はい」

 「ふふっ、一輝から貴方の話を聞いていたので、他人の気がしませんね」

 「え、僕の話ですか?」

 「ええ、私に顔つきがそっくりな、泣き虫だけれど、とても心優しい自慢の弟が居るって」

 「に、兄さん……」
 
 おお、瞬が照れてる照れてる。
 エスメラルダもニコニコと笑ってますし、星矢達三人は……、星矢と氷河はニヤニヤしてますし、紫龍と沙織が穏やかに微笑んでますね。
 眩しい……癒しのオーラ纏ってるよ此処の子達。
 やだ……私ったら、汚れすぎ……?


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