夢への導き

□女神と星座の導きによりて
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 「(え、此処どこ?)」

 「(確か、家で寝てたよね?)」っと事前にあった事を必死に思い出す。
 そう、会社で自分が任されていた書類の作成、コピーをしてギリギリ定時で帰れた事に喜んで、ご飯もちょっと豪華に刻んだトマトと赤ワインを少し入れて、お肉もお肉屋さんで買った良いところをもらい、圧力鍋で煮込んだビーフシチューである。中々美味ではないかと自賛してみたり。

 「(なんて!今はご飯の事はいいのです。今、この場所になぜいるのか状況整理しないと!)」

 しかも、今いる所はまさに裏路地で、何が起こるか分からないのである。
 つい、ウロウロと歩き回ってしまい、考え事もしていたので地面を見るのが遅れてしまった。

 ずるっ

 「はぅあっ!」

 ウロウロ歩いて足元にあったちり紙?を踏んで滑ってしまったらしい。

 「(あ、コレ、後頭部ぶつけるパターンですね)」

 なぜか冷静にそう思いました。
 けれど、衝撃に対して身体を強張らせていたのだが一向に痛みはやってこない。
 それよりも背中に力強くて、温かい腕に抱き留められていました。
 
 「君、大丈夫か?」

 フッと自分以外の声が自分より少し高い頭上から聞こえてくる。
 そちらの方に目線を上げてみると。

 「ん?この辺りでは見かけない顔だね。こんな所で何をしていたんだい?」

 滑って転びそうになった所を助けてもらい、そう話しかけてきたのは濃い茶髪に赤い鉢巻きをした少年でした。

 「た、助け、ていただき、ありがとうございます……。あの……、不躾で申し訳ないのですが、聞きたい事があるんです……」

 転んだ事に驚いた事で”何をしていたか”という言葉を聞きながらドキドキした胸を押さえ、お礼を言いつつもこちらの、疑問に思っていた事を聞いていました。

 「ん?」

 「ココはドコなんですか?」

 その問いに驚いたのは少年のほうだったが、
 慌てず冷静に私が少し警戒しているのが伝わった様で、優しく話しかける事にしてくれたみたいでした。

 「此処はギリシア。ギリシアの”ロドリオ村”だよ」

 「”ギリシアのロドリオ村”……」

 それを聞いた私の顔は驚きに満ちている事でしょう。

 「(ん?ロドリ…オ……村?)ていうか!ギリシア!!?え、ここって日本じゃないんですか!?」

 「日本……?何処かで聞いた…様な……!ああ、君は東洋人なんだね。こんな所で出会うなんて随分珍しいな」

 そう言われた私は少年の顔をじっと見つめてみる。
 ものすごく見覚えがありました。
 それよりも、そんなに見つめては失礼だ。挨拶せねば。

 「あの、えっと……私は真名と申します。」

 「ああ、名乗らずにすまない。わたしの名は”アイオロス”。
 よろしく、真名」

 「(あ、ア、アイオロスですとぉー!?)」

 ”ギリシア”、”ロドリオ村”、”アイオロス”。
 こんなにもピースが集まると”ある予想”をしてしまう。
 ま、まさか、此処って……【聖闘士星矢】の世界!?
 そんな、まさか!?ちょっと待って!私、何もしてませんし、何も事故ってないのですが!?転生した訳でもなく、そうするとトリップ?何がきっかけなんです!?と、とにかく、状況を把握する為に質問をしてみる事にしました。

 「アイ「アイオロス」ふぇ?」

 裏路地の入口から顔を覗かせていたのは、背は真名より少し大きく、顔つきに幼さが目立った少年が居ました。

 「ああ、サガ。待たせてしまってすまない」

 「それは良いが、どうかしたのか?」

 「(や、やっぱりぃーーー!!)」

 ”神の化身”キタ━━━━━━━━!!
 【星矢】と言ったらこの二人ですよねー!!
 間近で見るとこの二人すごい……。雰囲気がというか、オーラっていうか(両方同じ意味?気にしないでください)

 「と、まぁ、――の小宇宙を感じて来てみたら、迷子を発見したんだ」

 「そうか……。君、あー、真名…でいいかな?」

 「あ、はい。真名と申します」

 「あぁ、失礼した。私の名は”サガ”。こちらのアイオロスとは同期の間柄だ」

 ぺこりとお辞儀して挨拶をする私を見て、合わせてくれるのか、同じくお辞儀をし返してくれるサガさん。

 「友人とは言ってくれないのか?」

 少し不満そうにサガさんを見つめるアイオロスさんにジト目で見つめ返しました。

 「……書庫掃除を私一人に任せて、兵の訓練に混じりに行くヤツを友人と呼ぶのはな」

 「ははは!で、サガ。この子から”あの小宇宙”を感じるんだが、もしかしてっと思うんだが」

 「話を逸らすな……。ふむ、確かにこの子からアレに似た小宇宙を感じるな」

 ジッと二人から見つめられて混乱する。
「(え?え?何、なんですかー!?アレに似たコスモって何!?)私、何もしてませんよー!?」

 「ああ!混乱させてすまない。落ち着いて聞いてほしいんだ。もしかしたら君は…」

 「アイオロス、此処で長く話すのには適さない場所だ。移動しよう」

 そう、三人がいる場所は自分と出会ってからずっと裏路地で話し込んでいました。誰にも聞かれないという点では打って付けではあるが、話し込む場所ではないでしょう。

 「そうだな」

 「あ、……はい」

 アイオロスさんと共に返事をし、裏路地から出ようとすると

 「真名」

 サガさんが手招きしている。二人は並んで私を待っていました。
 その二人から手を差し出され、おずおずと手を重ねる。
 
 「?」

 そしてその瞬間に、裏路地には誰もいなくなったのでありました。
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