††996††
□開花
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思い出すなぁ
あの時のこと…
あの時も、こんな風にほっぺが痛かった…
子どもの頃に誘拐されたことがあった
身代金目的の誘拐で、相手は私を殺したりはしないだろうって思った
頭では殺されないってわかってたけど、あの時はまだ小さかったから怖さに負けて泣きじゃくってた
そしたら誘拐犯に顔を殴られた
もちろん両親にだって顔なんて傷つけられたことなかった
自分の顔が綺麗なことはわかってたし、誘拐犯が美しくない顔だってのも理解していた
恐怖には勝てないくせに、美意識とかプライドだけが謎に成長していて私はどうにも我慢できなくなった
気づいたら3人組の誘拐犯は床に血まみれで転がっていて、私の体は返り血で染まっていた
その時 私は初めて人を殺した
駆けつけた警察官には、包丁で脅されて 怖いこと言われて暴れたらみんな死んじゃったって説明したけど、間違いなく私は、自分の意思で殺した
違う、あまりにムカつきすぎて
「間違って」殺しちゃったんだ
もちろんこんなの罪には問われなかった
そもそも、相手は大の大人3人
幼い私は誘拐された身
脅された子どもが決死の覚悟で泣き喚いて、相手が持っていた武器でたまたま傷ついたという正当防衛
私に殺しの前科は無い
そもそも前科もなにも、犯罪なんて起こしたことないのだから
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「久しぶりだなぁ…この感覚…
あーあ、薄汚い手で私の美しい顔に傷つけてくれたんだ
「間違って」殺しても文句ないよね?」
感傷に浸ってる間に相当殴り込まれたみたいで体中がズキズキする
まぁ、念が使えない人間の生身の攻撃なんてこんなもんだよね…
「私……
可愛いだけじゃなく、強いから」
響きわたる歓声
つんざくほどの相手の悲鳴、断末魔
眩い光の中で たくさんの声の中で
私は目の前の人間を殺した
「勝者 ラム選手ーっ!」
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