chain

□さいかい
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ヨークシンの中心から少し外れた今は使われていない廃ビル群





確かにここなら、あまり人も寄り付かないし、死角も多いから仮に殴り込みに来られても戦闘フィールドとしてはもってこいだ





同時に、もしあの情報がガセだとしてここに私をおびき出して消すことも容易い……ってわけだ





でも、どうやらその類の罠は無さそう
ま、もし死角にスナイパーが潜んで私を狙っていたとしても 銃の類にやられる気はさらさらないけど





「んー、無駄足だったかなぁ
でも、この場所の存在を知ったのは大きいよね」





ここなら、中心地へも行けない距離じゃないし、もし彼らが仮の拠点にするにも条件はいいはず





戻ろうとした時に、微かな気配を感じた
やっぱ罠張られていたのかと身構え、絶をして物陰に隠れる



にしても、こんなに微かな気配…
しかも複数じゃない、相手は1人
偶然 人が通りかかるようなところでもないし、相手は念が使える能力者…


もしかして、情報通り 旅団のメンバーが?だとしたら、せめて姿だけでも見ておきたい





あぁ、すっごく怖い
心臓の音が大音量で聞こえる
脳から血液が全部下に下がっていくような感覚がする





「…」





少しずつ気配が近づいてくる
私があの気配を察知してから絶をしたから、相手が私より上なら私に気づいているかもしれない





絶、気配を断つ…完璧に…存在を消して…





近づいてくる相手の姿を捉える





「え…」





心臓が、嫌な音を立てる



冷や汗がじんわりと滲んでくる



息を吸うのを忘れる



指先がつーっと冷たくなる





「なんで…」





その言葉を発した時
私はその人物の目の前に立っていた





「なんで…、ここにいるの…」





前にセンセとした会話がフラッシュバックして脳内を駆け巡る





_____




『私にとって、お兄ちゃんは家族で、兄で、かけがえのない大切な人だった』


『私の世界の住人は私とお兄ちゃんだけだったの』


『お前は、兄のことどう思ってる?』


『今も好きか?会いたいか?それとも憎いか?会ったら殺したいか?』


『お兄ちゃんに、会ったら?』


『お兄ちゃんのことは、今でも好き』


『会ったら…どうしたいんだろ』


『わかんない そのときになんないと』





_____





「お兄ちゃん……」





.
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