††996††

□無力
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「?」



何かが視えたわけじゃない
でも、何かを感じた
確かじゃないけど、そこに何かある気がした



「クロロ…、痛い?」

「!… なぜそんなことになったか聞かないのか?」



心臓の辺りに違和感を感じる
きっとこれも、念の力なんだろう
200階クラスで色々な念に触れたからこそわかる、念の奥深さ


私にはわからない力がここにある
それはすごく強くて、硬い



「言えないんなら、聞かないよ」

「ラム…」

「こういうのって私のアフロディーテじゃ治せないんだね」



クロロに触れても、女神が出てこないってことはこれは怪我とかではないということ



「除念が必要だ」

「除念?」



聞いたことない言葉だった



「かけられた念を取り外すことだ」

「それ私でもできる?」

「いや、できない」



除念師っていう除念専門の能力者がいて、それはとても高度で特殊な能力なんだと言う



「私じゃ、なんにもできないの?
クロロの力になれないの?」



クロロのおかげで、今の私がある
どんなに感謝してもしきれない恩人で
私が世界で一番大好きな人


そんな人が目の前で苦しんでるのに、私にはなにもできないの?



「ごめんね……クロロ…」



悲しくて、悔しくて、自分がこんなに無力だってこと忘れててバカみたいに泣けてきた



ちょっと念を覚えて強くなったからって、調子乗ってた
私には、何にもないのに 何かすごい人なんじゃないかって勘違いしてた



私は好きな人の1人すら、助けてあげられない、ちっぽけな存在だ



「オレのために泣かないでくれラム
可愛い顔が台無しだぞ?」



泣きじゃくる私の両頬を包んで笑うクロロ
そんなこと言わないで…
貴方は私の大事な人なんだから



「大好きな人のために泣かないで
いつ泣くの…?」

「…ラム」



クロロは、私を引き寄せキスをした



「?!」



突然のことに時が止まる
私、今 クロロにキスされてるの?



「泣き止んだか?」

「クロロ…」



触れるだけのキスは余韻だけを残して夢のように過ぎた



あまりに驚きすぎて涙も止まり、ただ立ちつくした



「大丈夫、信頼できるやつに除念師探しを依頼した
だからそんな顔するな」





子どもをあやすような声で私に言い聞かせるクロロの言葉に、少しだけ安心した



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