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□つぶやき
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クロロside.





昔から、本をよく読んでいた
本にはオレの知らないことがたくさん書いてあって オレがいかに無知で、何も持っていないかを思い知らされた





だが、それは決して不快ではなかった
今まで知らなかったことを知ったオレは、知らなかった頃のオレより 優れている気がしたからだ





『かぞく…』





どんな小説を読んでも、その中の登場人物たちには良かれ悪かれ家族がいた
父がいて、母がいて、子どもがいた
子どもは1人の場合もあるし、複数の場合もあった


仲のいい家族は幸せだ
本の中では多くが幸せな家族を良しとしていた





オレは、家族が欲しいと思った
だが、親のようなものならここにもいる 長老や少し年上の面倒見がいい人なんかは、親に似ている





だが、違う
オレが欲しいのは そういうのとは違う





守るべき家族
きょうだいが欲しかった





家族は家族の幸せを願うもの
自分ではない他者の幸せなど考えたことはなかったから興味があった





オレが初めて欲しいと思ったは家族だった

そして、オレが初めて盗んだのが家族だ





ここには良く黒いスーツの人たちが何かを持ってくる、マフィアと言うらしい



この街はあの人間達から得るもので賄っている



いつも大量の銃器を持ってくるその車にはたまに人が乗っていた
その人たちは憔悴しきっていて、目には絶望の色が滲んでいた
泣くものはおらず、皆 己の最期を悟ったような目をしていた



そんな中にオレは見つけた
目の輝きを失わない、彼女を



オレはマフィアの連中の隙をついて車からその子を盗んだ





初めて人の物を盗んだ瞬間だった
ゴミの山から探して拾うのではなく、誰かの物をバレずに盗んだ





結果は上手くいった
その時の謎の高揚感は今でも覚えている
目の前にある欲しいものを対価を払わずに手に入れたのだ、達成感があった





これは、オレの宝物だ
絶対に誰にも渡さない、オレだけのものだ





『ラム、今日からオレがお前のお兄ちゃんだ』





まだ言葉も上手く話せないような子どもに名前を教える
ラムは、本に登場するオレの好きな人物だ


それから名付けた、オレの妹
ラムと名前を呼ぶと笑った
オレは決めた





この宝物は大切にする
家族は家族の幸せを願うもの
オレの手を握る小さな手はあまりにか弱く、脆い



絶対にラムを幸せにする
どんなことをしても
どんな手を使っても



例え、いつかこの手を離してしまう時が来たとしても





_____





「東、か…」





あの時、旅団の団長になった時にオレはラムを手放した



オレの手では、もうラムを幸せにしてやらないと思ったからだ
オレと共にいても、ラムを幸せにすることはできない



もうオレには、この手でラムに触れる資格はない





だから、オレは手放した
ラムの幸せのためなら、オレはどんな手もつかう





fin.
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