†966†

□覚悟
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クロロに連れてこられたのは、1人だったら決して近寄らないような都心の闇の部分



一歩大通りに出ればそこには超近代的な文明が溢れているのに、ここに光は届かない



一部の人間の富のために虐げられている貧しい人たちの住むエリアだ



「クロロ…? どこ行くの?」

「ラム、オレは人を殺せる
何のためらいもなく、人の命を奪える人間だ」



私の手を引いて歩きながら、クロロはそう言い 廃墟のようなところで足を止めた



「?」



所々 崩れていて今はもぬけの殻のようなその建物とクロロの発した言葉が理解できずに私はクロロを見た



「ヒソカと同じようにオレは人殺しだ」



私がクロロの言葉を脳で処理する速度よりはやくクロロは物陰に潜んでいた人の頭部を粉砕した



手を血に染めるクロロと横に転がっている死体を交互に見てやっと、今目の前で起きてることを理解した



どうやら、この廃墟に身を隠していた何者かを目にも留まらぬ速さで捕らえ、その頭部を形も残らないほど粉々にしたのだ



何も武器を持っていないクロロが素手でそれをどうやって行ったのかは私には見えなかったけど、間違いなく今 目の前で人が死んだ



死んだんじゃない、殺されたんだ
私の目の前にいるこの人の手で



「それでもオレと来るか?」



人を殺したとは思えないほど、普通の顔で さっきまで一緒にお茶していたのと変わらぬトーンでクロロは私に言った



「私は将来 会社を継ぐ人間だから
前科とかつくわけにいかない
だから、罪のない人を殺して殺人鬼みたいにはなれない…」



何の罪もない人の命を、何にも感じずに平然と奪うことは私にはできない

それは、倫理とかじゃなくて この世界で生きるものが守るルールに則ってそれを犯すことはできないという理性からくる考えだ



「なら…」



クロロは血で汚れた手を何かで綺麗にした
さっきまで血まみれだった手は、何事もなかったような綺麗さでそこにある



「でもねクロロ
悪い人なら、殺せるよ
…この人みたいな犯罪者なら」



死んでる人の名前とか知らないけど、この人が罪を犯した人ってのは視ればわかる

何の罪もない人は殺さないけど
ハンターになるなら、きっと悪い人を殺さないといけない時もあるだろうし



それに、ルールがあるから人を殺してはいけないと理解しているだけで 人の命を奪う行為に関して私には倫理的抵抗は少なかった



「わかった
悪い、脅すようなことをして
オレは何もラムの人格まで、変えたいわけじゃない
これから先 人を殺せとラムに言うつもりもないからな」



クロロはそう言って私の頭を撫でた
その手はついさっき1人の人間の命を奪ったとは到底思えないほど、あたたかく優しかった



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