長編 禁じられた二人

□episode 8〜あなた以外〜
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私は大切なものを手離した…




誰よりも何よりも特別で大切で、愛してたのに。




「彩さん…」



荷物も全部忘れてる。

追いかけなかったのは、またここに来る口実を作るため…

財布なかったら暮らせへんやろ。




私はそんな甘い考えを持ってた。





彩さんをあんなにも激しく襲った後の罪悪感…
好きな人が前にいると記憶が飛ぶくらい本人を痛めつけるくらいに私はしてしまう。



そんな自分が嫌い。
ちゃんと、丁寧に愛してあげたいんや…











それに、彩さんは私の他に美優紀さんっていう彼女がいる。


もう二回も電話を聞いたから…


美優紀さんの方が好きなんやないかな。

何故か楽しそうに話す彩さんを見て思った…



離したほうがええんかもって。

彩さんのためにもって、変な正義感…
いや、正義感なんかやない。



ただ自分を守るだめだけや。


もう彩さんのことを諦めるなんて、無理やのにな…




どうしよう。


彩さん…あなたは、もう美優紀さんのところへ行ってしまったのですか?










ーーー










夢莉と喧嘩してから2日がちゃん経った…


荷物を取りに行く勇気が無くて、ずっと美優紀に世話になってるけど。



もうこのままあかんと思うねん…




『あのさ、美優紀…』



キッチンで料理をしてる彼女に後ろから話しかけた。



「ん?別れへんよ。」



美優紀はずっと、私はそんなことを言うつもりやないのに…


やっぱり恐怖心が沸いてたのか、それをよく言ってくる。


『誰もそんなこと言ってへんやん。』



「ふふっ、冗談やって!」



そう言って、笑いかける美優紀に…


私はどこか心の底から笑えなかった。



モヤモヤしてるところを突かれたのかな。







『荷物…取りに行ってくるわ。』




「あかんよ!!何されるか分からへんし、あんなに傷つけられたんやで?」



『知っとるよ、やから荷物取ったらすぐに帰るよ。』



「そんなん電話して、荷物を家に送って下さいって言ったらええやん。お金はこっちが出すからって…」



確かに美優紀の言う通りで、そうせざるおえなかった…もう傷付くのが怖いし。






『分かったから…怒らんで?』


「あ、ごめん…」



今はなんか、もう全てズタボロや…

何をするのにも気力さえ湧かない。


でも、財布とか荷物がないとやっぱり困る。




プルルルル…プルルルル…





しばらく、夢莉に電話をかけた。

やっぱり出てくれへんかな。




(もしもし…)



『あ…』



夢莉の声を聞くとまた、泣きそうになる。

会いたい…好きや…



(何ですか?)



『あの、荷物…送ってくれへん?私の家に。困るねん。』



(無理です。)



『え、なんでよ…』



(住所知らない。)



『今から教える。』



(送り方知らない。)



『やから、それも教えるってお金もこっちが出すから着払いで…』


なぜか、それさえ夢莉は拒否する。


(…嫌です。)



『なに言ってるんよ、ふざけんで。』



私もさすがに怒った。




(手間なことはしたくないんで、取りに来てください。)



『な、なんなんよ…それ。』


(嫌なら勝手にどうぞ、荷物は送らないんで。じゃあ…)




電話を切られそうになった…




『ちょっと待ってや!!』



(なんですか?)


『じゃあ、取りに行くけど…これだけは聞いてくれへん?』



(なに?)



『私がこれから行くから鍵を開けて…夢莉はどこかに行ってて欲しい。もう会いたくないねん。』




それしかなかった。


美優紀を裏切らないし…




(分かりました…じゃあ、、、また。)




電話は切れてしまった。





『美優紀、ちょっと仕事の関係で外出てくるな。』



「え?彩ちゃん?!」



がちゃんっ!!




バレバレの嘘をついてしまった。


でも、ええねん…会わんのやから。
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