BOOK
□手 (ウネ)
3ページ/5ページ
「ハッタリだろと思ったけど『二人にはウニョクさんがアイドルっていう以外にも、立ち向かわないといけない問題があるようですが』なんて言われてさ」
とヒョクはそこで言葉を止めた。
「それで?」
おれは先を促す。ヒョクはニヤリと笑っておれを見た。
「お前、信じてないんだろ?」
うっ…
それはそうだけど
無言で睨みつけるとあいつはクックッと可笑しそうに笑った。
「聞きたい?」
悔しかったけど好奇心には勝てなくて渋々頷く。
「『二人なら乗り越えられます。結婚という形のゴールではないかも知れませんが、二人が離れる事はないでしょう。それくらい今の相手は唯一無二の存在です』だってさ」
「やった!」
思わず出た声に自分で驚いた。その後急に恥ずかしくなっておれは俯く。
信じないってバカにしてたクセに、何喜んでんだ、おれ
なんの根拠もない手相の話なのに
でも嬉しかった。
いつも抱えてる不安な気持ちを少し和らげて貰えた気がした。
「オレもヤッタって思ったよ。お前みたいに声には出さなかったけどな」
あいつはへへッと笑っておれの手を取った。ヒョクの細い指がおれの指の間に滑り込む。ぎゅうっと握り込まれその熱が伝わって来る。
「いい事だけ信じればいいじゃん。オレ達の味方してくれる"何か"があると思うだけで、ちょっとは楽になれるだろ?」
確かにそうだ
変に意固地になっていた自分に気づいておれは頷きながら恋人の手を握り返す。ヒョクはこちらを向いて優しく微笑んだ。胸がキュンとしておれはその柔らかそうな唇に顔を寄せる。