BOOK
□手 (ウネ)
1ページ/5ページ
ヒョクの手が好き
不安な時、さりげなくおれの手を握ってくれる優しい手も
カッコいい事言ったあと照れて顔を覆う恥ずかしがり屋の手も
触って欲しいとこをわざと外して素通りして行く意地悪な手も
全部好き
だから
他の人には触られたくないんだ
「アレはちょっと失礼だったんじゃない?」
ホテルに帰るタクシーの中でヒョクが言った。
「え、何が?」
ホントはわかってたけどとぼけてみる
「手相の…シマダさん、だっけ?にお前、なんか感じ悪かったぞ。見て欲しくないとかさ」
「そう?ただのジョークじゃん」
「ふうん。その割には怖い顔してたけどな」
おれはヒョクの視線から逃げて窓の外に目を遣る。
「手相なんて別に見て貰いたくなかったのに」
ヒョクやトゥギヒョンは占いとか好きだけど、おれはそういうのあんまり信じてない
自分の道は自分で切り開くしかないと思ってるから
「でも、番組のゲストだろ。わざわざ来てくれたのにさぁ…」
あいつの責めるような口調になんだかムカっとして大声が出た。
「だからヤだったけどちゃんと見せただろ!」
ヒョクが驚いたようにおれを見たのがわかった。そして聞こえた小さな溜息。
胸に苦いものが拡がる。
ホントは
ホントはあの人がお前の手を触りまくってたのが嫌だったんだよ