BOOK
□ツン希望 (ウネ)
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真っ赤な顔のヒョクはリョウクに飛びかかって捕まえようとしたが、一瞬早くリョウクは駆け出していた。
「ホントの事じゃん!ドンヘが死んだらオレ生きていけない〜って泣いて…」
「うるせーっ!バカーッ!黙ってろ!」
リョウクはあっと言う間にリビングから姿を消した。
なーんだ、そういう事かぁ…
おれはニヤニヤしながらヒョクの顔を見た。
目が合うと耳まで真っ赤っ赤になったアイツは気まずそうに下を向き、くるりとおれに背を向けて出て行こうとする。
「待って!」
慌てて駆け寄りその背中に抱きついた。
「や、やめろよ!」
ドラマでおれが死ぬとこ見て心配になったから、おれが帰ってくるの待っててくれたんだ。
そんで顔見て抱きしめて、安心したってワケ…?
「嬉しいよ」
おれは呟く。
「そんな風に心配して貰えて」
「うっせぇ」
小さな声でヒョクは毒づく。
昨日みたいなヒョクより口が悪くてもいつものヒョクの方がいい。
胸の奥が熱くなっておれは腕に力を込める。
「…もっと下手っぴな芝居でいいのになんであんな…」
俯くヒョクの声の最後は小さくて聞き取れなかった。
「それっておれの演技褒めてくれてんの?」
首筋に顔を押しつけておれは囁いた。
ヒョクは観念したようにはぁと溜息をひとつつくと、振り向いてニヤッと笑った。
「ま、オレの演技力には敵わねぇけどな」
うん
おれは心の中で同意する。
ヒョクの方がおれより演技力あるよ、絶対。
だってこんなにおれにメロメロなくせにいつも素っ気ないフリばっかしてんだからさ。
「見たかったな…ヒョクの泣き顔。そうだ!DVD貰ってるから一緒に見る?」
「バカ言え」
ヒョクは怒った声で吐き捨てた。
「あんなの見るくらいなら、他の女とキスしてるの見る方がマシだ」
へぇ…そうなんだ
おれはヤだな
他の人とキスしてんの見るくらいなら、死んでくれた方がいいかな
てか殺しちゃうかもね
へへへ
ま、これは言わないでおこうっと
なんか寒気がするってヒョクはおれから離れようともがいたけど、おれは抱きついた腕を離さなかった。
ねぇ、ヒョク
もしドラマのオファー来たらちゃんとおれに相談してね
でないとおれ…
終
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