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□治療 (ギュイェ)
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『全部全力でやろうとするから、そんな事になるんだよ!バカじゃないの?ヒョン』
iphoneに録音した声を聴かせると、ベッドに座ったマンネは拗ねた顔で俺を睨みつけた。
「こんな事言ってたの…誰だっけな?」
意地悪く笑って俺はマンネの頬を指でつつく。
言い返そうと思わず開いたマンネの唇を俺は手で押さえる。
「喋っちゃダメだぞ」
キュヒョンは悲しそうな顔で口を閉じ、溜息をついた。
「わかってても全部、一所懸命やっちゃうんだよな。わかるよ、俺も同じだったから…」
囁いてその頭を胸に抱えた。
歌う事が存在意義でもある俺達にとって、歌えない事は何より辛い。気持ちがわかるだけに普通の言葉で慰めるなんて出来なかった。
マンネは俺を押しのけ《用がないなら帰って》と紙に書きなぐる。
「そんなに怒るなよ。からかって悪かったよ」
謝ると意外にも素直な反応が返ってきた。
《結構凹んでるんだからいじめないで》
「わかった、わかった」
俺はキュヒョンの隣に腰を下ろす。
「何か欲しい物あるか?食べたい物とかは?」
《自分で買いに行けるから大丈夫。心配しすぎ》
キュヒョンは呆れたような顔で俺を見て、可笑しそうに笑った。
《そう言えば、俺もおんなじ事言ってたね》
「確かにそうだったな」
しつこいくらい俺の喉を心配して、あれやこれやと世話を焼いていたマンネを思い出す。
「あ、そうだ」
俺は持ってきたステンレスボトルを差し出した。
「これ、あの時くれた中で一番効いた気がするハーブティ…スロートコートとか言うヤツ。それのレモンなんとかってのをちょっと作って来たんだ。ティーバッグはそっちに置いといたから」