BOOK1
□flower
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私がこの病気と関わってしまったのは、まだいたる所で花が咲き誇る春のこと。
ジョ「わ…なんでここに花が落ちてるんだろ」
室内に落ちていた綺麗な花に、私は迂闊にも触ってしまった。
花吐き病。
正式名称は「嘔吐中枢花被性疾患」。
吐き出された花に接触することで感染する病気で、片思いを拗らせると口から花を吐き出すようになる。
遙か昔から潜伏と流行を繰り返してきたらしい。
根本的な治療法は未だ見つかっていないが、両思いになると白銀の百合を吐き出して完治する。
ジョンヨンside
私は花吐き病にかかっている。片思いを拗らせると口から花を吐き出す病気。心当たりはあるし、自分の中ではもう気持ちの整理がついているけど、まだ誰にも言えていない。
私が片思いを拗らせている相手がモモだったから。
もし男のひとが好きだったなら皆に言えていたのかもしれないけど、同じグループの、ましてや女の子が好きだなんてとてもじゃないけど言えない。
今日も、吐いた花をビニール袋にパンパンになるほど詰め込む。ビニール越しに見える鮮やかな色は、今の私には毒々しく見えてしまって気持ち悪かった。
時計を見ると、そろそろ皆で撮影に向かう時間。
私はビニール袋をベッドの下に隠してドアを閉めた。
楽屋でスマホをいじっていると、モモとナヨンおんにのイチャイチャする声が聞こえてくる。別に付き合ってる訳じゃないから誰も何にも悪くないけどすごく腹が立つのが正直なところで。
ジョ「ちょっとトイレ行ってくる」
そう言って私はその場から逃げた。
ジョ「げほっ…ごほっ、ごほっ……ぅあ」
私が咳をするのと同じリズムで形も色も、大きさも違う花がぼろぼろと零れ落ちてきた。
水道を彩る様々な色にどうしようもない苛立ちを覚えながら後片付けをして楽屋に戻る。
私は、こんなことを1ヶ月近く繰り返していた。