BOOK1

□絶対勝てないライバル
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モブ男視点での話です。かなり出てきます


もう本当にめんどくさい。なんでわざわざ大学が休みの日に出身校に来なきゃならないんだ。
今日俺は出身中学に、現在通っている大学や就職についての考えを話しに来ている。なんでも、中学の卒業実績に書きたいらしい。

3年間登校した懐かしい校舎に足を踏み入れて、最後の年に使った教室を目指す。
ガタガタする引き戸を開けて中に入ると、教室はぎゃーぎゃーと騒がしくて、もう何年も経ったのに変わんねぇなと思わず笑みがこぼれる。
俺に気付いた皆が「久しぶり〜」「あれ?なんかイケメンになった?笑笑」なんて言ってきて、さっきまでの嫌な気持ちがスッと引いていった。


しばらくたわいのない話をしていると、またドアが開いた。皆が一斉にドアの方を見て、そして言葉を失う。

ユ・ジョンヨン。

全体的に黒い服から細くて長い腕が見えていて、栗色のポニーテールが揺れている。
中学の同級生の1人だった彼女は、今や大人気アイドルTWICEのメンバーだ。

あの頃から整った顔立ちだったけど、男勝りで元気な性格だったから、「女の子」というより「友達」って感じが強かった。
なのに、3、4年ぶりに見た彼女は画面の向こうでキラキラした笑顔をファンに向けていて、すごく遠い存在になってしまったんだと思っていた。

「ジョンヨナ!久しぶり〜いつも見てるよ!」

1人の女子が彼女に駆け寄ると、

「ほんと!?ありがとう〜」

なんてはにかんで答えた。
やっぱりアイドルだからか、皆どんどん近付いていく。

もうあんなに遠い人間なのに。
本来俺らみたいな人間が近付いてはいけない存在なのに。



しばらくすると、当時の担任が入ってきて、皆指定された席につき始める。

隣の席には、ジョンヨンがいた。
もう俺なんて覚えてないだろうと思って下を向いていると、

「久しぶりだね。今は大学行ってるの?」

と声をかけられた。まさかと思って顔を上げると、中学のときと変わらない瞳が俺を見つめている。

「あ、うん。…俺のこと、覚えてんの?」
「何言ってんの?私そんなに記憶力悪くないよ笑笑」

その後どんなことを話したかは、喜びがでかすぎて覚えてない。


俺はたった今、あまりにも無謀な恋に落ちてしまった。



全て終わったから帰ろうとしていると、

「この後なんだけどさ、久しぶりに会えたし皆でどっか行かない?」
と声がかかった。なんも予定ないし俺も行こうかな。
でも、ジョンヨンは「ごめん、私今日用事あるんだ、また誘って〜」と言って急いで出ていってしまった。

チャンスなら今しか無いと思った俺は、
「ごめん、俺も仕事あるから!」
と言って教室を飛び出した。
階段を降りようとすると、揺れるポニーテールが見えた。
「ジ、ジョンヨン!!」
大声で呼び止めると、「あれ?どうしたん?」と振り向いてくれた。

「いっ、今から俺も帰るんだけど、途中まで一緒にいい?」
「いいけど、なんか用事あるの?」
「あー、えっと、仕事が残ってて…」
「え?大学行ってるんだよね?」
「えっ!?あ、大学の教授の手伝い的な仕事があって…そっちは?仕事?」
「私は仕事じゃないよ。でも、大事な用事なんだ」
靴を履いて昇降口まで来ると、ジョンヨンが「じゃあまたね」と歩きだしたので、思わず腕をつかんでしまった。
「っ…?」
「あ、あのさ、俺、中学のときからジョンヨンのこと、いいなって思ってたんだけどさ、あの、俺と」

「ジョンヨナ〜!」

「わ、ナヨンおんに」
「こんにちはー、TWICEのナヨンです!ジョンヨンの同級生の方ですか?」
「あ、はい、そうです…こっ、こんにちは」
「ジョンヨナ、早く行かないとピンキーさん置いてっちゃうって」
「ちょ、ちょっと待ってよおんに!!」

俺の目の前でどんどん話が進んでいく。
「じゃあごめん、今日はこれで!また皆で集まろーね!!」
「あっ、ジョンヨ…」

ジョンヨンと一緒に走っていたナヨンさんはくるっとこっちに振り向いた。


「わたしの」



あぁ、あれには勝てない


ナヨンside


今日はジョンヨンとデートの日。

出身校に行ってるジョンヨンを迎えに行って、早くイチャイチャしたい。


車から降りて昇降口まで行くと、ジョンヨンが男に腕をつかまれていた。

私のジョンヨナに何触ってんのとか、
そんな人ほっといて早く私のとこに帰ってきてとか、いろんな気持ちが出てきて、我慢できなくてジョンヨンに声をかけた。



ジョンヨンとあの男の会話を遮って、先にジョンヨンを車に向かわせてから私は振り向いた。



「わたしの」


伝わったでしょ?
あの子は私のものなんだよ



End


〜〜〜〜
ナヨンさんめっちゃ嫌な人にしてしまってすみません…


読んでくださりありがとうございました!


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