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□今夜、草食系男子を食す
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いつからかクリスマスなんてどうでも良くなった。
別に自棄になっているわけではなく年月と共に意識しなくなって来たと言うのが本音で、長く付き合っていると記念日やイベントの度にお祝いや準備をするのも…なんて少し面倒にさえ感じてしまう。

それに彼もそれらには疎いタイプの人間で、きっと周りから言われなければ今日がクリスマスだなんてことにすら気が付かない。こんなに街中クリスマスです!って雰囲気なのに。


「さて問題です」
「?」
「今日は何の日でしょう?」
「クリスマスですね」
「あれ。知ってた?」
「母さんが朝からうるさくて」

大きく吐き出された溜め息から何となくだが想像できるお母さんとトランクスのやり取り。彼は口うるさいと愚痴をこぼすが母親の方は心配して世話を焼いているに違いない。だって機械ばかりイジっている息子だもの。

「今夜は帰れないね」
「帰って来ないと思ってますよ、多分」
「わ、エッチ」
「そ、そういう意味じゃないですよ」
「お母さんはそういう意味で帰って来ないと思ってるんじゃない?」

にや、と笑ってやれば慌てながら必死に否定するトランクス。どれだけ否定しようがいい大人の男がクリスマスに彼女と過ごすなんてどうしてもそれに結び付くだろうに。

「ピュアだねぇ、トランクスは」
「俺だって考えてますよ…!男ですから…!」
「うん。だから泊まってくでしょ?」

意地悪く顔を覗き込めば耳まで真っ赤にした彼が視線を逸らしながらこくりと頷いた。

今年の記念日は仕事が忙しくてそれどころじゃなかったし、クリスマスぐらいは二人でのんびりするのも悪くない。





「ね、こっち向いてよ」
「無理です」
「今更お風呂ぐらいで照れる?」
「照れるとか照れないとかって問題じゃなくて…」

じゃあどういう問題なんだと問い掛けながら彼の背中を指先でなぞるとそれはまぁ嫌そうに身体が揺れた。くすぐったいのを我慢するのって結構ストレスを感じるのかもしれないけどやってる方はそこそこ楽しい。トランクスの反応も可愛いし。

「ちょっ…、なまえさん、」
「やめて欲しい?」
「やめないなら俺もやり返しますよ?」
「できないくせに」

ここまで強気に出られるのも長年の付き合いで彼が優しくて奥手なことを知っているから。服を着ているならまだしも裸の私相手には無理でしょうよ。

「…今日はやけに意地悪ですね」
「肉食系女子ってこんな感じかな?」
「知らないですよ」
「ゴリ押しされたらくらっと来ちゃうんじゃない?」
「そう思いますか?」
「うん」

好みがあるとは言え女の子に猛アタックされたら真面目なトランクスも少しはその気になったりするかも…。常に受け身だし。とは言え私も肉食系ってわけではないと思うけど。


「…なんかちょっと心配かも」
「あるわけない。…なまえさんこそ俺以外にもこうやって…」
「してない」
「…でも俺より良い人いっぱいいるじゃないですか」
「ないよ」
「本当に?」

かつてこれほどまでに異性の嫉妬に悶えたことが一度たりとあっただろうか。普段そんなこと言わないトランクスが不安そうに俯いて。草食系男子のやきもちの破壊力恐るべし。

「心配しすぎだよ」
「そりゃあしますよ。俺で満足出来てるのかどうか…」
「それは夜の方かな?」
「っ……」
「確かめてみる?せっかくのクリスマスだし」
「………」
「うん?」
「あとで…時間をかけてゆっくり確かめます」
「今すぐでもいいよ?」
「煽らないでください…我慢してるんですから」
「可愛いね。食べちゃいたい」




今夜、草食系男子を食す。
( たまには俺にも食べさせてくださいよ )



20201221 クリスマスネタのつもりが脱線…




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