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□2019クリスマス
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目の前の真っ白いケーキを見つめながらサンタとトナカイどちらの砂糖菓子を食べようか真剣に考える。
ここは無難にサンタ…でもトナカイの方が可愛い気もするし…。
「決まったか?」
「もう少し待って」
このやり取りももう何度目か分からないほど悩んだ。悩んだけれど決まらない。だって一年に一回だよ、このサンタとトナカイを食べられるの。
「味は同じだろう」
「じゃあゴジータはどっちがいい?」
「どっちでも」
「私もそうなんだよ。ゴジータがどっちか選んでくれたら決まる」
「サンタ」
「待って、そう言われると私もサンタがよくなって来た」
「ならトナカイ」
「でもトナカイも捨てがたいなぁ…」
「両方食べればいいんじゃないか?」
「太るじゃん。砂糖だよ」
ここに来てゴジータも正直どうでもいいといった雰囲気を醸し出して来たが「サンタとトナカイを半分ずつ食べるのは?」と提案してくれた。が、それってサンタの首をパキッてしちゃうやつでしょ?無理無理。
「ゴテンクスにやったら喜ぶんじゃないか?」
「私も食べたい」
「よし。サンタのほうが大きいからなまえはサンタ。トナカイは俺が貰う」
そう言って私の返事も聞かずにトナカイをパクりと食べてしまったゴジータを一瞬恨んでしまいそうになったけれど、自分じゃいつまでも決められなかったしこれで良かったのかな。
「…トナカイ美味しい?」
「ふつう」
「サンタさん…いただきます」
「複雑な顔して食べたらサンタが泣くぞ」
「そうだね。いただきまーす。………あ、どこから食べよう」
「上から食べたらいいんじゃないか?」
「うん、そうする」
大きな口を開けて食べようとしたところまではよかった。けれどこんなに綺麗に作られたサンタを食べるのは少し気が引けてなかなかサンタが口の中に入って来ない。これ、食べていいのかな。なんだか可哀想な気さえしてくる。
「先にケーキを食べよう」
「……うん」
もたもたしている私の気持ちを察したのか、もしくは待っていられないと呆れられたのかゴジータがホールケーキに包丁を入れて切り分けたものをお皿に乗せて渡してくれた。
サンタはアレだけど…ケーキは普通に食べられるのでそれをパクパクと口に運びながらもうすぐ訪れるであろう別れを惜しむようにサンタを見つめる。
「俺が食べさせてやろうか」
「恥ずかしいからいい」
「待ってたらクリスマスが終わりそうだ」
そんなわけないじゃん、と言ってやりたいところだが今の私は否定できないくらいサンタを食べるのを躊躇している。ケーキを食べ終えたらサンタを食べようって決めていたのにやっぱり無理だ。
「……ゴジータ、」
「ん。口開いて」
「い…いただきます」
結局ゴジータの指で挟まれたサンタは容赦なく私の口の中におさまった。この大きさをひとくちはなかなかしんどい…。でもかじられた姿を見るのも辛いのでこれでいい。ありがとうゴジータ愛してる。
「ふつうだろ?」
「おいしいよ。来年も食べたいね」
「…また来年も悩むのか」
「次はサンタだけのやつにする。メリークリスマスって書いてあるチョコレートはゴジータにあげるね!」
「そう言いながらどうせ来年も悩むんだろうな」
うん。多分。
20191224