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□こ…こっちからだって
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ドタドタと遠慮なしに走る音はアパートやマンションであれば確実に騒音問題になるほどうるさい。その音を聞いて「あぁ、ゴテンクスが帰って来た」とそこにいた全員が笑みを浮かべていたけれど当の本人は焦るばかりで飛んだほうが速いということすら忘れて息を切らしながら走って帰って来たようだ。

「なまえ!!」

彼女の名前を呼ぶとともに勢いよく開けられた扉からいつもと変わらないメタモル星人の服を着たゴテンクスが飛び込むように入って来た。ゴジータは溜息をついてベジットはうるさいと文句を言っているがゴテンクスは気にとめることもなく彼女の元へと駆け寄った。

「なんもされてないよな!?」
「ゴテンクス、ちょっと落ち着いて?」
「どうせ俺らが良からぬことでもしてると思って急いで帰ってきたんだろ?」

その通りと言わんばかりに両腕で彼女の身体を包み込むとなまえも少し照れながらお帰りと言ってゴテンクスの背中に手を回した。ゴジータとベジットからしても自分の息子と近い立ち位置にあるゴテンクスが彼女と仲睦まじくやっているのは嬉しいもので自然と笑みが溢れていた。

「心配しすぎなんだよ、お前は」
「確かにゴテンクスは少し心配性かなぁ」
「なっ…、いいだろべつに!」
「子供だからなぁゴテンクスは」
「今それ関係ないって!」
「まだキスもしてねぇなんてヘタレ確定だろ」
「はぁ!?オレが居ない間にどんな会話してるんだよ!」

顔を真っ赤にしたゴテンクスがからかわれるのはごめんだと言いながらなまえの手を引いてそそくさとその場を離れた。ふたりで一緒にゴテンクスの部屋に戻るとすぐに彼女を抱き寄せながら腑に落ちない表情で呟いた。

「…キスぐらいしてる」
「この前したね。でも私からだった」
「ってことは…されたいってこと?」
「そりゃあ…ね。相手が好きな人なら」
「じゃあ…今から」
「う、ん…」
「言っとくけど、こ…こっちからだってできるんだからな」
「どもってるよ?緊張してるでしょ」
「あーもう喋るな!」

勢い任せに重なった唇は意外にも控えめで少しだけ触れたかどうかという程度のものだった。照れくさいのか目も合わせられないゴテンクスに彼女が「ゴテンクスのことだから歯ぐらいぶつかると思ってた」と笑みを浮かべるとそこまで下手じゃないと言いながら再度唇を重ねた。



20190318 お題提供 TOY



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