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□ベジット
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最近やけに疲れやすい。暑くなって来て体力を奪われているのか外にも出たくないなんて日が何日も続いている。日焼けするのも嫌だし。
しかしながら家の中でも熱中症になると聞いて水を沢山飲んでいるせいかお腹が膨れて余計に重く感じる。動きたくない。悪循環。

そんなダルい気分の私を余所にベジットはこれで何千回目だと聞きたくなるくらいの腹筋をこなしていてダラダラしたい私にはそのやる気がどこから来るのか是非とも教えてほしい。

「ベジットの熱気が来る…」
「すげー燃えてるからな」
「あっちでやってよーダラダラしてる私がダメ人間みたいじゃん」
「ダメ人間とまでは言わねぇけどたまには運動したほうがいいんじゃねーの?」

ごもっともです。でもなんとなく気分も優れないし貧血気味な気もするし…とにかく動きたくないんです。

「あー…しんどい。私の身体どうしちゃったんだろう…」
「ただ疲れてダラダラしてたいだけなのか病気かなんかか…」
「……病気!?」

感覚的には五月病みたいな一時的なものだと思い込んでいたがそうか、その線もあった。
病気かぁ…。ぱっと思いつくのはやっぱり婦人科系かな…。

「病院行った方がいい…よね?」
「行きたくねぇの?」
「できれば痛い検査は避けたい」

なんて、もし本当に病気ならそんな甘いこと言っていられないのだけど。それでもやはり勇気は必要だ。

「……嫌だなぁ、」

ただでさえ重い腰が更に重くなる。ベジットは「ついてってやるよ」って言ってくれているがだからと言ってこの腰が軽くなるわけではない。

「そういやお前動いてないわりに痩せたよな」
「水でお腹いっぱい」
「あのなぁ……」

呆れた様子のベジットにひょいっと身体を持ち上げられて一瞬ふわりと浮き上がった感覚が気持ち悪くて口を押さえた。お姫様抱っこするなら一言先に言ってくれ。

「う…ベジット…気持ちわる、」
「お前マジで大丈夫か?」
「いや無理…」
「なんか悪いもんでも食ったか」
「あたるほど食べてない…」

それもそうかと納得しながらベッドの上に私を下ろすとトレーニングの後に飲む予定で買っておいたという天然水をご丁寧にキャップまで開封して渡してくれた。

「…ありがと」
「お前さ、腹になんかいんだろ」
「悪い虫ですか」
「そうじゃねぇって」

ガシガシと頭を掻きながら「ほんと鈍感だよな」と私を馬鹿にしてベッドの横にしゃがみ込む。鈍感ってなんだ。さっきから私を病気やら食中毒にしたい男め。

「……ま、お前をこんだけ苦しめてんだからある意味悪いっちゃ悪いか」
「…………?」
「なんかあったら俺が護ってやる。頑張れオカアサン」
「え、え…?」
「とりあえず寝ろ。んで起きたら病院行くぞ」

頭を2、3度ぽんぽんと撫でて部屋から出て行くベジットの後ろ姿を見つめながら途方にくれた。
オカアサン…?私が?


「………そっか。そういうことか」


そのあとベジットの言う通り少し休んでから病院に行くとめでたくご懐妊だということが分かった。私よりも先に気付いたベジットさん、さすがです。


(頑張れ、オトウサン)
(だよなー、もっと修行増やすか)
(もう充分だと思うよ)


20200605



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