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□ゴジータ
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「優しすぎるのって罪だよね…」
独り言のように呟かれた言葉はテレビの音で半分掻き消された。俺に言ったのか本当に独り言なのか確かめようと「優しすぎるのがなんだって?」と問い掛ければ「ううん、べつに」と返ってきたからどうやら大きな独り言だったらしい。
「でも優しくなかったらそれはそれで悲しかったりするのかな」
「また独り言か?」
「ううん、ゴジータに聞いた」
俺に聞いたと言いながらも視線はテレビの画面から動こうとはしない。なんの番組を見ているのかと自分も画面を覗いてみれば話の内容とは何の関係もなさそうなニュース番組だった。
「ゴジータは誰にでも優しいから罪な男だよね」
「性格だろう。誰にでも優しくしてるつもりはないが」
「じゃあ私には特別優しくしてる?」
「いや、普通に接してる」
ほら、そこだよ。って漸くテレビから此方に向けられた彼女の顔は不満気で少し悲しそう…と表現すればいいだろうか。お世辞にも楽しそうには見えない。
「ああ罪深い…」
「なら冷たくしたらいいか?」
「でもゴジータに冷たくされたら死んじゃうかも」
「大丈夫、冷たくされたぐらいで死にはしない」
「たとえ話だよ。たとえ話」
散々罪人にしておいて結局、俺の彼女は優しい俺が好きらしい。