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「ねぇ、ゴジータさん…?」

大きな背中を見つめながら話しかけると眠そうな声で「ん?」と返ってくる。
ぎゅっと服を握り締めると不思議に思ったゴジータさんが寝返りをうって私の髪をゆっくりと梳いていく時の優しい顔と言ったらもう…。

「どうした?」
「ゴジータさんは…ちゃんと私のこと好きですか?」
「好きだからこうやって一緒に居るんだろ?」
「でも、なんか…」
「なにか言われたのか?」
「そういうわけじゃないですけど」

なにか変化があるのかと問われれば何も無いと答える。いつも通り一緒に仕事して一緒に帰って生活をしてるだけ。

「明日二人でどこか行こう」
「デートのお誘いですか?珍しいじゃないですか」
「ゴテンクスに先を越されたからな」

困ったように笑ったあと「おやすみ」と軽く唇を重ねると彼は静かに眠りについた。


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「なんっか彼女になったって実感がないんですよ!これっぽっちも!」

ベジットさんに作ってもらったカクテルをあっという間に飲み干してテーブルの上に突っ伏した。お酒は控えてたんじゃないかって?いいの今日の私はお客さんだから!

「昨日だってデートなんて言いながら普通にショッピングしただけですよ」
「それがデートなんじゃねーの?」
「なにも特別なことなんてなかったです。いつも通り!」

突っ伏したままグラスをカウンターに置いておかわりを催促すると「はいはい」と言いながら頭をぽんぽんされた。ベジットさんが慰めてくれるなんて相当可哀想な人間に見えるんですね。はい、可哀想な女です。

見えずともベジットさんがカウンター越しにカクテルを準備してくれているのが分かって内心ホッとする。もう飲むなとかやめとけとか言われたら発狂する。今の私は心が狭い。


「お前の嫁さん荒れてんぞ」

そんなベジットさんの声が聞こえて、あー誰か来たからいい話し相手だったベジットさんを独り占めできなくなって残念…なんてへこんでいると突っ伏している私の頭に大きな手が乗せられた。

「なまえ、どうした?」
「………。ゴジータさんだ」
「大丈夫か?」
「……だいじょぶ」

問題なのは体調ではない。心の方だ。普段優しいのに急に意地悪して来たと思ったらまた優しくなったり。いつまでたってもゴジータさんの本心が分からない。好きなんて口で言うだけなら簡単だ。平気で嘘を吐ける人だっているはず。

「大丈夫そうじゃないな」
「…ほんとは大丈夫じゃない…酔ってます…」
「なら、俺がお持ち帰りしてもいいよな?」
「は…い?」

イライラしてる時も悲しくて泣いてる時も、この人はいつだって私をドキドキさせる。



20191013



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