long

□24
1ページ/1ページ



「ゴジータファンクラブの皆さんに悲報です。なんとあの、あのゴジータさんに恋人ができたらしいです…!」

なんですって!?と悲鳴が響き渡る店内で一人挙動不審な私を見てベジットさんがクスりと笑ったのが分かった。
まさかファンクラブなんてものが存在していたなんて。私も入りたい。

じゃなくて。恋人って…。誰!?


24


「ちょちょちょ!ゴジータさん!!」
「なんだ、騒がしいな」
「恋人って!?」
「恋人?」
「ゴジータさんのファンクラブが騒めきを起こしてますよ!と言うよりなんなんですか!?恋人がいるなんて聞いてませんよ!」
「ああ、言ってないからな」

鍋でグツグツとパスタを茹でながらまるで自分は関係ないとばかりに冷静なゴジータさん。そこにベジットさんがやって来て「まー頑張れ」と私の肩をぽんと叩いて行った。

「い…意味深……」
「俺の恋人は大変だな。なまえチャン」
「………ん?」
「ん?」
「私?」
「他に居ていいのか?」
「いや、ダメ…ですけど」
「居ないから心配ない」
「それはよかったです……」

あれ。私いつゴジータさんの恋人になったんだっけ。





「ゴジータに彼女ができたんだって?」

テーブルの上を片付けていたら後ろからゴテンクスくんに声を掛けられ何枚か重ねられたお皿をひょいっと退けてくれた。
結構重いと思うんだけど片手で簡単に持ち上げちゃうから凄いなっていつも感心する。

「そうみたいだね」
「やけに他人事じゃん」
「あんまり実感がなくて」

テーブルを拭き終わって顔を上げるとカウンターでグラスを片付けているベジットさんと目が合って「俺はもっと早くくっつくと思ってた」と言われた。

「あれ、ゴジータの彼女ってなまえのこと?」
「知らずに話振ったのかよ」
「だってさ、一緒に住んでて一緒に仕事もしててそんでも今まで付き合おうってならなかった二人が今更付き合う理由って?」
「ガキには分かんねぇよなー。残念だったなゴテンクス」

ベジットさんに慰められるように頭をわしゃわしゃされているゴテンクスくん。でも確かになんで今更?ってなるよね。むしろ私自身もそう思ってる。

「なんか…全部ゴジータさんの計画通りに動かされてる気がして嫌な感じです…」
「計画通りに行ってたらもっと早くにどうにかなってそうなもんだけど」
「…と言いますと?」
「最初から気になってなけりゃ連れて帰らねえって。酔った女なんか」
「下心とか、」
「それなら毎晩お楽しみだろうぜ」
「…………」

この手の話はベジットさんと二人ならなんとか乗り切れるがゴテンクスくんがいると非常に気まずい。試しにちらっと顔色を伺ってみると少し照れくさそうな顔をしてるし。


「ま、まぁ…お互いに好きなら良かったじゃん」
「う、ん…ありがとう」

って言いながら実際に良かったのかどうかは不明だ。



20191006



[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ