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「なまえ、すっげー怖い顔してる」
横からゴテンクスくんに軽く頬を引っ張られて我にかえる。
ムカムカする感情が思わず顔に出てしまっていたらしい。仕事中になんてことだ。
「そういえば昨日…殴られたりしてないよな?」
「あ……うん。大丈夫。ごめんね」
はやく謝らねばとは思っていた。でも朝からぶり返すのも…なんて変に気を使っていたらタイミングを逃した。そして今に至る。
「てっきりオレが原因で喧嘩でもしてんのかと思った。ゴジータもあんなんだし」
あんなんだし、って言いながらゴテンクスくんがゴジータさんに視線を向けたから釣られて私もそっちを見てしまった。ほら、またムカムカしちゃうじゃん!
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どうやらゴジータさんは昨日の言葉通り私に嫉妬させようとしてるらしい。しかもあからさまに。
お客さんと仲良くお喋りしてて、それはもう結構見慣れたけれど今日はやたらと距離が近い気がする。
いつもはお客さんの方から猛アタックしているイメージでゴジータさんはあくまで営業だと思っていたけど、今回ばかりは彼も満更ではないといった感じだ。
「ほんっとに意地悪!」
「なんかあった?」
「私に嫉妬させたいって言ってた」
「あー、それであれ」
「ひどいと思うでしょ?」
「まぁ」
「気になって仕事にならない…」
「じゃーオレらも仲良くしよっか」
ゴテンクスくんにぐい、と肩を引き寄せられて身体が密着する。ぶわっと一気に顔が熱くなって咄嗟に彼から逸らした視線は無意識のうちにゴジータさんのほうへ。
バチッと音がしそうなくらい見事に目が合った。そしてまた咄嗟に逸らした視線はカウンターにいるベジットさんに、最後にはゴテンクスくんへと帰って来た。
「オレら、後で殺されるかもな」
「そんな物騒な……」
とは言え、ゴジータさんのあの鋭い瞳は正直クマやライオンなんて比ではない。
「お、怒ってる…」
「まー怒るよなぁ」
再度目が合ったゴジータさんは不機嫌な顔を一変させ、後で覚えてろよと言わんばかりに不敵に微笑んだ。
「殺される!逃げなきゃ!」
20190915