other

□5
1ページ/1ページ



「ゴジータさん、本当に私のこと好きですか?」
「ああ」
「本当に?」
「本当に」
「ほんとにほんと?」
「ほんとにほんと」
「ほんとにほんとにほん…っ」
「本当に好きだ。だから少し黙ろうか」

ソファーの上にどすんと倒れた私に馬乗りになった彼は優しい口調で言葉を吐くくせにわりと乱暴だ。上から唇を押し付けて強制的に黙らせるという何とも強引な行動にでているではないか。

「二回目だな。キスするの」
「私のファーストキス返してください」
「返したところで二回目も俺だ」
「結局ゴジータさんですか…」
「そうか、なまえは相手が俺じゃ不満か」
「や、ちがっ…」
「もっと満足してもらえるように頑張らないとな」

にやっとする顔にここまで恐怖心を煽られたのは初めてだ。
鏡を見なくても分かるほどに引きつった私の顔を見つめるゴジータさんの手がどさくさに紛れてお腹の辺りをさわさわと撫で始めている。

「ま、まって…!」
「?」
「この手はなんですかこの手は!」
「つい、な」
「ついじゃないです」
「そうだな。無理強いはしない約束だ」

慣れた手付きで私の身体を起き上がらせて頭をわしゃわしゃとするゴジータさんはさっきの強引なゴジータさんとはまるで別人のよう。
一応、一応ね、私の気持ちも汲み取ってくれているらしい。

「…急に優しくされると調子狂う」
「彼女には優しくしないとな」
「嘘。誰にでもするんでしょ」
「かもな」

ですよねー。って言ったら怒られるかな。私だってゴジータさんの優しさに何度ドキドキさせられたことか。
今となっては懐かしい思い出…ってそんな昔の話じゃないけど。

「ゴジータさん、すごく優しかったから…本気で好きになってくれたらどれだけ幸せなんだろうって考えてました」
「思ってたのと違ったか?」
「うーん…遊びだった時と変わらない…かも」
「はじめから本気だったからな」
「っ!!」
「遊ばれてたのは俺のほう」
「ご、ごめんなさい!」
「いいよ。これから本気になってくれたら」
「…なんか…くすぐったい。誰かと付き合うって、こんな感じ?」

ゴジータさんにぎゅっと抱きついて見上げると驚いたのか目を大きくしたあと背中に手を回して抱き締め返してくれた。

「こんなもんじゃないかもな」
「もっとドキドキしたり…?」
「なまえが望めばドキドキすることも気持ちいいこともいっぱいあるだろうな」
「すぐそっちの話になりますね…無理強いはしないんでしょ?」
「ああ。だからなまえにそうなることを望んで貰わないと」
「……優しく教えてくれます?」
「全部教えてやるさ」
「優しくですよ?痛いのは嫌です」
「努力はする」

はい、してください。今後のためにも是非。


20190616



[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ