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ゴテンクスくんがシャワーを浴びに行っている間に何度スマホが鳴っていたことだろう。相手は誰だと考えるまでもない。ゴジータさんだ。

首にタオルをかけた彼がスマホを見て溜息をつくと私に視線を向けて「かなり怒ってそう」と困ったように笑った。

「怒るようなポジションじゃないよ…私は」
「さっきからどうした?」
「ゴジータさんにとっては遊び相手の一人」
「ゴジータがそう言った?」
「…言ってない。けど」

直接言われたわけではないがアレを見せられたら直接言われたも同然ではないだろうか。
まさか家に呼ぶような親密な相手がいたとは…。居るかもしれない居てもおかしくないとは思いながらも、やっぱり心のどこかで私と一緒に住んでいるんだから大丈夫と安心していたのかもしれない。

「特別な感情がなかったらわざわざ迎えに来ないと思うけど」
「……え?」


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「遊びに行くとは聞いたが泊まって来るとは聞いてないぞ」
「そりゃあ1日一緒にいたらそういう雰囲気にもなるだろ?」
「ならない。どういうつもりだ」
「オレが誘った。それになまえも頷いた。それだけ」

隣の部屋で待っているようにと言われ半ば押し込まれたと言っても過言ではない状況になってすぐ、さっきまで私とゴテンクスくんが居た部屋からはゴジータさんの声が聞こえて来た。電話が繋がらないから直接家までやって来たのだろう。

「それならそうと連絡ぐらいしてこい」
「したら素直に泊まらせたって?そんなわけないよな」
「ああ。ないな」

きっと二人の間にはバチバチと火花が飛んでいるに違いない。まさか…さすがに殴り合いの喧嘩なんてしないよね。

隙間から少しでも様子を伺えないもんかとおそるおそる扉を開けようと試みる。こんなことをするのは本日二回目。そしてこれっきりにしたいものだ。

「で、どうするんだ?なまえ」
「ひぇ!?」

突然投げかけられた言葉はどうやら私宛てらしい。扉の隙間からゴジータさんがこちらを見ながら近づいて来ているのが分かる。

「帰るか?それともここに泊まるか?」

ゴジータさんは私が動揺して咄嗟に閉めた扉を開けようとはしなかった。ただ扉の前で私に「帰ろう」と優しく声を掛けてくれている。

「……私よりももっと他の人と一緒に住んだほうがいいんじゃないですか?」
「?」
「帰らない。…近いうちに出て行くので荷物だけまとめさせて下さい」

私の居場所はなくなった。
でもゴジータさんが幸せになれるならそれでいい。



20190831



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