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「明日ゴテンクスと出掛けるんだってな」

家に帰るや否や眉間に皺を寄せたゴジータさんに詰め寄られあたふた。帰り道は普通にしてたのに家と外でのこの変わりようと言ったら。

「よ、よくご存知で」
「どこに?」
「近くのテーマパークに」
「あいつらしいな」

なんでもベジットさんから私とゴテンクスくんが仲よさげにデートの約束をしていたと聞いたらしい。まぁ否定はできないか。

「…ゴジータさんも誰かとお出掛けして来たらどうですか?」
「?」
「たまには私と離れて息抜きしないと」

家でも職場でも一緒だと息が詰まっちゃいますよ、と言えばひとつ大きな溜息をついた彼に頭をくしゃくしゃと撫でられる。

さっきまでの怖い顔はどこに行ったのだろう。打って変わって少し切なそうな表情を見せられ咄嗟に呼び止めてみたが、彼は立ち止まることも返事をすることもなくリビングから消えてしまった。


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「…ゴジータさん、」
「ん?」
「明日……」
「…?あぁ、楽しんで来い」
「じゃなくて…」
「じゃなくて?」
「…………」
「どうした?」
「やっぱりなんでもないです…おやすみなさい」

くるっと反転してゴジータさんに背中を向けた。こんな時でも同じベッドで並んで寝ようとしているのだから私と彼の関係性ときたら随分と不可思議なものだ。

いつだったか。彼の口から独占欲が強いというワードが出たのは。そのわりに私がゴテンクスくんとふたりきりで出掛けるということには何も言わない。いや…言われたところで困るだけだけれど。



噴水と大きな時計が遠くからでも確認できるこの場所は待ち合わせ場所にするのにはうってつけだ。予定より少し早くに到着したため本日のデートのお相手はまだ来ていないようで、一応辺りをキョロキョロしてみるがやっぱりまだ来ていないらしい。

待ち合わせ場所と時間は昨日の夜ゴジータさんの携帯に連絡があった。私のスマホは使い物にはならないし、そう言えば行き先だけ決めておいて待ち合わせのことなんて頭になかった。だからゴジータさんは私を見送る時に「なまえとゴテンクスなんて、不安しかない組み合わせだな」と苦笑しながら手を振っていた。まぁ…小さな子供じゃないんだからきっと大丈夫。


「っと、早めに来たけど遅かった。待った?」
「私もさっき来たところ」
「そう言う時は結構待ってんだよな」
「ほんとにさっきだよ?」
「どっちにしろ待たせてごめん。ゴジータなんか言ってた?」
「…ううん。なにも…」
「もしかしてオレ余計なこと聞いた…って、なまえ?」
「混んでくる前に早く行こ」

意外にも大きなゴテンクスくんの手を引いて歩き出すと彼は驚いてしまったのか私の名前を呼びながら大丈夫か、とかなんかあったのか、とか言いながら心配そうにこちらの顔色を伺っている。

私はかなりの早足なのに歩幅の大きな彼は普通に歩いているため端からみたら少し恥ずかしい…ので、歩く速度を通常運転にしてみる。

「どうかした?」
「ご、ごめん。感じ悪い…よね」
「べつにオレ的には手ぇ繋げたからラッキー」
「ぅ、わっ!ごめん!ごめん!」

無意識に繋いでいたらしい彼の手を離すと「オレは繋ぎたい」と言ったゴテンクスくんの指が自分の指に絡まった。

「恋人繋ぎってやつ?初めてかも」

少し照れた様子の彼と肩を並べて歩くのは新鮮で、無邪気で子供みたいなゴテンクスくんに沢山元気を貰った日だった。



20190807



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