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今日はゴテンクスくんが居るためお兄さんは厨房のほうに回っている。どうやらこれがいつもの定位置らしいがお兄さん本人からはそんなことさえ教えては貰えなかった。

やっぱり、こんなにも知らないことだらけの人と一緒に住んでいるなんておかしな話だろうか。


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「あ、そのへん危ないからあんま歩かない方がいいかも」
「危ない?」
「さっきコップ割ったんだ。破片散らばってるからさ」

足下を見てみれば確かに小さなガラスが落ちていてキラキラしている。急いで掃除用具を持って来て処理をするとゴテンクスくんにありがとうと微笑まれた。

「よくやるから怒られるんだよな」
「おっちょこちょい?」
「普通だよ普通」
「あ…指、血が出てる」
「破片で切った」

指先から流れる血を見てこれもしょっちゅうなんだと言いながらティッシュで傷口を拭うゴテンクスくんにポッケに入れてあった絆創膏を手渡す。何かあった時のために持ち歩いておいて正解だった。

「キャラ物の絆創膏なんてオレがしてたら笑われそう」
「これしかないからごめんね」
「こんなの持ってるなんて女の子だよなー」
「偶然持ってただけ。でも役に立ってよかった」

絆創膏を貼るのに難儀している彼の指にペタリとそれを貼ると照れくさそうにお礼を言われた。
まだ出会ったばかりだけれど、なんだか弟ができたみたいで嬉しいな。


「ずいぶん楽しそうだな」

片手でお盆を持ったお兄さんがテーブルの上にお皿を置くとすごく美味しそうなにおいがしてお腹が鳴りそうになった。ケチャップで“ゴテンクス”と書かれたオムライスと“なまえ”と書かれた小さめのオムライスがあって頬が緩む。

「可愛いことするんだ…」
「嫌なら食べなくてもいいが」
「食べます!いただきますっ!」

早々に両手を合わせてお兄さん特製のオムライスを口に運んだ。自分で作ったオムライスより断然美味しい。まるで私の味の好みを知り尽くしているみたいに完璧な味付けだ。卵もふわとろで堪らない。

「おいしー!」
「一緒に住んでんだから毎日ゴジータの手料理食べてんじゃねーの?」
「作ってもらったり一緒に作ったり…でもオムライスは初めてだから感動しちゃった」
「なまえは料理できんの?」
「ひ、人並みには」
「ゴテンクスは一生食べることなんてないだろうな」
「そんなの分かんないだろ?オレがなまえと付き合うかも」
「……!?」

し、視線が痛い…。ゴテンクスくん、爆弾を落とさないで。



20190701



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