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「おはよう」
「お、おはようございます…」

夢のせいで火照ってしまっていた身体が少し冷えて落ち着いた頃、リビングに顔を出せば既に朝食を食べ終えたらしいお兄さんがマグカップを片手に微笑んだ。

なんだかいつも以上に意識してしまう。そして、それに追い討ちをかけるように私を呼び寄せると再度「おはよう」と言いながら首筋にキスをして来るもんだからもう頭はパニック状態だ。

「なっ、な、なに…!?」
「誰の夢を見てた?」
「ひぇっ!?」

もしや…バレてる?でもたとえバレていたとしても私の口から あなたとキスしてる夢を見ました なんて言えない。いや、実際しょっちゅうしてるけどさ。

「俺の名前を呼んでた」
「え、?あ…ゴジータ、さん…?」
「なんで知ってるんだ?」
「えっと…この前合鍵で入って来た人から…」
「ゴテンクスか。ずいぶん仲良くなったんだな」
「や、違います、違うんです」

目が、目が怖い…!なんでこんなに怒っているのか。私が気安く名前を呼んでしまったから?突き刺さるような鋭い視線に射抜かれて悪い意味で心臓が破裂しそうだった。


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「あ…、ゴジータの彼女」
「か、!?」

今日もお店の手伝いをして欲しいとお兄さんに言われ勿論断る理由もないので一緒に出勤すれば、そこにはゴテンクスくん(勝手に呼んでみる)の姿があった。見るからに私より年下なので“さん”ではなく“くん”で呼ばせてもらうことにしよう。

「だって一緒に住んでるんだろ?」
「住んでますけど…それは少々訳ありでして」
「訳あり?」
「えっと、」
「二人だけの秘密だ。聞くな」
「オレの家来る?」
「えっ!?」
「訳ありなんだろ?」
「う、うん…」

ゴテンクスくんの言葉に頷きながらちらりとお兄さんに視線を向ける。目が合って「はぁ…」と溜息をつくと私の頭をくしゃくしゃとしながら「俺の方がいいだろう?」と聞かれたがゴテンクスくんが居るためすぐにうんとは流石に言えない。失礼だ。

「付き合ってもないのに縛り付けてんの?」
「お前には関係ない」
「…まぁいいけどさ」
「え、えっとえっと、ゴテンクスくんは何でここに?」
「ここで働いてる」
「ってことは…昨日言ってたもう一人の従業員ってゴテンクスくん?」
「そうだな」
「…教えてくれてもいいじゃないですか」
「知りたかったのか?」
「そりゃあ……」

知りたかったです。と口に出しかけたところでずっと頭に置かれていたお兄さんの手で肩を抱き寄せられる。さっきよりも近くに感じる彼の匂いに頭がくらくらする。

私はここ数日、この意地悪なお兄さんにドキドキさせられっぱなしだ。



20190625



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