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部屋着がないためお兄さんに貸してもらった服を着てソファーにあるクッションに顔を埋めた。

さっきはドキドキしたな…。なんか…普通にキスしてるし、なんだかんだ今日も同じベッドで寝ちゃうんだろうし…。
そもそも何にも知らない私を家に住まわせてメリットがあるとは思えない。ご飯は主に彼が作ってくれてるし、キスはしてるけどそれ以上はまだ…。って、まだってなに、これからするみたいじゃん。じゃなくて、都合のいいように扱われるのならもうとっくの昔にそういう関係に至っているだろうということで…。あ、でも記憶にはないけれど一回はしたのかな…上に乗られたとか言ってたような…うわ、酔っていたとは言えすごい大胆。それにしても彼の目的ってなんだろう。


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今日お店を手伝って分かったことはバーテンダーのお兄さんがベジットさんという名前だってこと。あとは今日は会えなかったけど従業員がもう一人いるということ、あとは…彼が結構モテるということ。だって女のお客さんに凄く話し掛けられてるんだもん。常連さんみたいな人ともお喋りしてて多分彼を目当てに来てるんだろうなぁって勝手に想像してみたり。

実は彼女がいたりして…ううん、いても何らおかしいことではない。でももしいたとしたら、きっと私なんかと一緒に住んでない、はず。

というところで限界がきたらしい。慣れない事をして思いの外疲れていたのかそのままソファーで気持ちよく熟睡した。



「…無防備な女だな」

彼がそう言いながら私の身体を抱えてベッドに寝かせてくれたのは薄っすらと記憶にある。眠過ぎてもはや自分でも寝てるのか起きてるのか怪しいぐらいだったので夢か妄想かもしれないがもうどれでもオッケー。

「おやすみ。なまえ」

耳元で優しい声が私の名前を呼んで、ふわりといい匂いがしたかと思えば唇に少しだけ何かが触れた。もしかして、またお兄さんにキスされたのかな。

「んー…ゴジータさん…」
「………」
「………」
「…寝言か」
「…ゴジータ…さん」
「起きたら何で名前を知ってるのか教えてもらうからな」





なんだかすっごくリアルな夢を見た気がする。お陰で熱でもあるんじゃないかと思うくらい身体が熱い状態で目が覚めた。だって、あのお兄さんキスが上手いんだよ。上手いって言うか…気持ちいい。キスだけでどうにかなってしまうなんて漫画や小説の中だけだと思ってたけど実際にもあるんだな。なんて考えながら隣を見れば私をドキドキさせている人物の姿はもうすでにない。

ああ、お兄さんごめんなさい。朝からこんな破廉恥なことを考えている人間が同居人で。



20190615



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