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□09
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「はぁ……」

湯船につかりながら大きく息を吐き捨てた。同居人と気まずくなるとはこんなにも地獄絵図なのか。たぶん、おそらく、お兄さんはいつも通りに接してくれているつもりなんだろうけどどこか素っ気ない気がしてしまう。

(お風呂出たくないな…)

そうは言っても髪も身体もしっかりと洗い終えてしまったしこうやって湯船に入ってからも随分と時間は経った。
お兄さんも早くお風呂を済ませて休みたいだろうし、そろそろ出なきゃ…。そう思って立ち上がったまさにその時、浴室の扉をこんこんとノックされて向こう側からお兄さんが心配して声を掛けてくれたので慌ててさっきと同じように湯船の中で座り込んだ。

「大丈夫か?」
「だ、だいじょうぶ!」
「のぼせてないか?」
「違うからほんと大丈夫です!」
「…ならいいが」

扉に映っていた彼のシルエットが消えたことを確認したあとホッと一息ついて浴室から出ると私は予想もしていなかった事態に見舞われることとなった。


09


「あ、あの、お兄さん?」
「うん?」
「ふ、服を着たいんですが…って、ん、ぅ…ッ!?」

浴室を出ると少し離れたところに彼がいて、バスタオルを巻いて出たのは正解だったと出る前の自分の判断を褒め称えたいところだがどうやらそんな時間は存在しなかったらしい。

お風呂上がりの無防備な状態のところに歩み寄られれば逃げ場もない私は拒否権もなく彼の両腕に収まった。
なんで今?せめて服を着てからお願いしますと言いたいところだが強引に顎を持ち上げられてキスをされているため言葉を発するのはむずかしい。

「んんーーっ…、」
「色気のない声だな」
「…だって、…急に」
「言ってからするものでもないだろ?」
「そ、そうですけどっ」

しっかりと舌までもを絡み取られて肩で息をする私の目の前で服を脱ぎだした彼にぎょっとする。見るつもりはなかったが筋肉質な身体がバッチリ見えてしまって色々とキャパオーバーだ。

「お、お邪魔しましたっっ!!」

身体に巻きつけているバスタオルをしっかりと片手で押さえながらもう片方の手で着替えを持ってダッシュで脱衣所から抜け出した。

お邪魔しましたって言ったけど思えばお邪魔された側だったな…。



20190610



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