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ひとつめの疑問。どうしてこんなところにいるのか。見覚えの無い部屋にひとりぽつんと男物だと思われる服を上だけ身に付けてベッドにいる自分。

ふたつめの疑問。どうしてこんなに身体が怠いのか。理由は分からないがとにかく重い。なんならこのままもう一度眠ってしまいたい気持ちでいっぱいだけれど自分の置かれている状況がいまいち理解できないまま眠ったところでどうせ質の良い睡眠は得られないだろう。

「起きたか」
「……?たぶん」
「たぶん?今から出掛ける。日付けが変わる前には帰ると思う」
「…行ってらっしゃい」
「ああ。あと、そんな格好で無いとは思うが外には出るな」

自分の姿をもう一度見てさすがにこれで出掛ける勇気はないと素直に彼の言葉に頷いた。

時刻はお昼前。今から日付けが変わる頃まで、さっき白いシャツを着て出て行った彼の帰りを私はただただ待つことになるのだろうか。

そしてみっつめの疑問。さっきの人は誰だ。


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立ち上がると少し長めのシャツが上手い具合に下の方までしっかりと身体を隠してくれていた。下着は身に付けているがどうしてこんな格好をしているのかという記憶は全くもってない。ただ、シャツから少しいい匂いがして何となくその香りがすごく好きで落ち着くものだったからこの服を着ていることで不思議と安心感を得ることができた。

(なにしよう…)

ベッドがあるから寝室だと勝手に解釈したその部屋を出てリビングに行くと机の上にラップされた炒飯が置いてあった。これは食べてもいいもんだろうか。何も言ってなかったけれど正直お腹も空いたし、コンビニに行くこともできないからもしこれを食べて怒られたら後で謝ろう。

両手を合わせてからご丁寧に準備されていたスプーンを持つ。この炒飯はさっきの彼が作ったものだろうか。もしそうだとしたらかなりの料理上手だ。だってものすごく美味しい。

会話をする相手もいないからあっという間に食べ終わって食器の後片付けを済ます。驚くほどキレイにされているキッチンで食器を洗うのは少し戸惑いもあるが気持ちがいい。

決して彼に会いたいわけではないのだけれど聞きたいことがありすぎるので早く帰ってこないもんかと、ひとりでテレビを見ながら警戒心の欠片もなくソファーの上で眠りこけた。



20190420



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