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やってしまった。そこそこ頭が痛いし身体も怠いしこれは軽い二日酔いかもしれない。しかも隣には私を抱き枕のようにしている金髪さんが居て、その気持ちが良さそうな寝顔といったら。あんな意地悪な男には到底思えないほど可愛い寝顔だ。

「ねー金髪さん、起きてよ」
「んー…」
「シャワー行きたいから離して」

身体を揺すってみたりほっぺをつついたりしてみたけれど彼が離してくれる気配は一向に無くて最終的にはツンツンした金髪を結構な力で引っ張ったけれど逆にぎゅっと抱き締められてしまってどうにもならない。早くシャワーを浴びたいのに。そして一秒でも早くここから脱出したい。

ある意味酔っ払って犯した過ちだったからまだ助かった。お酒のせいにすると言ったら聞こえは悪いがまぁ言い訳程度にはなるだろう。そして出来ることならこの金髪の遊び人が寝ている間におさらばしたかったけれどガッチリホールドされている自分ではおさらばするどころか起きて服を着ることすら難しい。

「金髪さーん。チャラ男さーん」
「誰がチャラ男だ」
「やっと起きた!」

起きるや否やペシンと頭を叩かれて頭痛に拍車がかかる。もうほんとに嫌だこの人。眠たそうに欠伸をしている間に逃げ出してしまおうかと考えたが頭が痛くてそれどころじゃない。私のバカ。

「おはよーさん」
「………おはよ」
「素面でも変わんねーな」
「こういう人間です」
「ふーん?」

なんだろう、意味深なふーんに妙に腹が立つ。さっきまで可愛い顔して寝てたのはどこの誰だと言ってやりたい。あの寝顔写真に収めておくべきだったかも。携帯ぐらいベッドサイドに置いておけばよかった。次は絶対撮ってやる。

「って…次とかないけど!」
「なんの話だよ」
「独り言」
「でっけぇ独り言だな」
「うるさい。シャワー行くから離してよバカアホチャラ男!」

必死に目の前の彼の身体を叩いてダメージを与えようと試みるが自分自身あまり力が入らないのもあるし、もちろん彼自体も物凄く強そうだしで返り討ちに遭うように呆気なく仰向けにされて手首をシーツに縫い付けられた。なんか嬉しそうな顔してるし何でこんなにムカつくポイントをいちいちついて来るんだろう。

「あんま暴れると気分悪くなるんじゃねえの?」
「もうすでに最悪な気分だからいいの」
「昨日はすっげーエロい顔してよがってたのにな」
「ほんと嫌い!はやく忘れて」
「まぁそう怒んなって」

嬉しそうな顔で額にキスされて頭を撫でられて少しばかりキュンとさせられて気分は更に最悪だ。それに掴まれてる手首は痛いし、よく見たら結構男らしい顔してるし…もうとことんムカつく。もう一ヶ月分ぐらいイライラしたと思う。

「チャラ男は撤回しろよな」
「チャラチャラしなくなったらね」
「じゃあちゃんと監視してくれんの?」
「やだよ面倒くさい」
「んなら今すぐ撤回な」

そう言って5回目のキスをする彼はやっぱり遊び人で、若気の至りのように見た目も落ち着きがなくて、撤回するなんて有り得ないと馬鹿にしてやったのに最終的には分かるまでキスしてやると意地悪く笑われて6回、7回、8回と数えた後はもう数えることすらやめてしまった。

「…酔ってるんだ?」
「俺はまったく?」
「…ならなに」
「わりと本気ってやつ?」
「私、一緒に居ても楽しくないよ。いっつもひとりでお酒ばっか飲んでるし夜の方はマグロだし」
「それやるまえも聞いたけど。つか、全然。むしろすんげー楽しませてもらったかもしんねぇ」
「…変態」

クスッと笑って「もっとお前のこと知りてぇな。なまえちゃん」と囁かれた言葉に、ああここで名前呼びですかと心の中でツッコミを入れた。もうどうでもいいや。頭も痛いし身体も怠いしなんかすっごくドキドキするし色々疲れちゃったよベジットさん。



20181006 お題 / TOY



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