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□見せつけるため
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「バーダックさん、帰って来てたんですね!」

特徴的な髪型をした彼が酒場の扉を開ければそれはそれは注目を集めてすぐさま人だかりが出来た。人気者と言うと彼は怒るかもしれないけれど、久しぶりに帰って来て顔を出せば毎度毎度彼は人に囲まれることになる。つまりは人気者だ。

お帰り、という言葉に軽く手をあげながら人だかりを抜けると私の姿を確認した彼がなんの躊躇もなく隣の席に腰を下ろして手早く注文を済ませた。周りからヒューヒューと在り来たりなからかう声が聞こえて来て恥ずかしいけど彼はお構いなしに二人の世界に入り込んだようだった。

「待ったか?」
「今回は長かったからね」
「この後あいてんだろ?」
「うん。あけておかないと誰かさんがうるさいから」

言葉には出さずとも遠回しにバーダックのためにあけておいたんだということはしっかりと彼にも伝わったようで、満足そうに笑みを浮かべた彼の骨張った大きな手が優しく腰に触れた。

「セクハラ」
「久しぶりなんだから大目に見ろ」
「恥ずかしい。こんな場所で」
「なら場所変えるか?」
「がっつき過ぎだよ」
「ご無沙汰だったからな」
「ずいぶんお盛んで」

まだまだ若いね、と呟けば腰を引き寄せながら「ああ」と短く答えた。そういえばいったいいくつなんだろうこの人。

「感謝しねぇとな。普通の男よりお前とやる時間が多い」
「あのねぇ…」
「冗談に決まってんだろ」

馬鹿にするように言い捨てた後、私の後ろ髪を掻き抱いた彼は鼻先同士をくっつけながらフッと小さく笑みを浮かべた。

なに…なんて野暮なことは聞かない。聞いても聞かなくてもどうせ彼の口から聞かされるのだから。

「…おかえり」
「ああ。待たせたな」

人目も憚らず何度か唇を啄んで終いには虫除けだと言って噛み付くほど激しくキスをする彼はやっぱり色々と豪快で私には止める術が見つからない。



20181223 お題提供 TOY



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