prologue


「爆弾ネズミだぁ?」

潮風が心地よいカフェテラス。柔らかい日差しに包まれた昼下がり、帽子を目深に被った男が素っ頓狂な声を上げた。

「そーそー。巷で噂の連続爆弾魔。単独犯ということ以外は、犯人の姿形も目的も不明。」

頬杖をついたまま新聞をぱらりとめくり、答えるのは、派手なジャケットに身を包んだ男。

「姿形も分からねえのに、連続した犯行だって分かるのは、一体どういうことなんだ?」

「爆破の仕方にクセがあるのよ。綺麗〜に、まるで洗濯物を畳むように周りに全く被害を与えず木っ端微塵。ありゃぁ技術と美学のある人間にしか出来ねぇ仕事だぜ。…んの割に潰す建物がしょっぼいのが気になるんだよな〜。」

「なんでネズミなんだ?」

「今一般的に言われている爆弾魔の目的が盗難だからっつーのと、建物をまるでネズミが巣食ったように倒壊するから、爆弾ネズミってわーけ。」

「ほぉ。しっかし何だって単独犯だって分かるんだよ?」

「さぁーな、そこも引っかかる所さ。きな臭いぜこいつぁ。」

「兎も角も俺らの仕事に影響すんのは確かだな。」

「そゆこと〜。仕事中に建物潰されちゃあ流石の俺らもお陀仏よ。」

「犯行の傾向は読めねぇのか?」

「マスコミの見解だと、重要文化財を盗難し闇市に流すことが目的らしいが、巻き込んで政界の要人やら機密文書やらをツブしてやがる。俺様にはこっちが目的としか思えねーな。」

「要人と文化財がセットになったら警戒せよってことか?」

「んま〜用心した方がいいでしょうな〜。」

帽子の男が深くタバコを吸い込み、ため息と共に吐き出した。


「嫌な予感がするぜ。」

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