本編

□1話
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季節は夏、世の中の多くの高校が夏休みを迎えようとしていた


夏といえば海に行ったりBBQをしたりと、遊び盛りの高校生にはもってこいの時期だ


ただそんな中、



キィン!


ここ明岩高校の野球部のグラウンドでは黙々と練習を行う者達がいた


本来、テスト週間のため多くの部活は休みとなっているが、


どうやら二人だけ自主練習でトスバッティングをしているみたいだ


「ラスト、いくぞ」スッ


その声掛けと同時にボールが放られ、


キィン!


それを打ち返し、ボールはネットへとおさまった


そのネットの中には多くのボールが入っており、真面目に練習を行っているのが窺える


そして練習を行っていた坊主頭の少年は持っていたバットを下ろし、汗を拭き始めた


指宿「ふぅ…今日はここまでだね…」ゴシゴシ



指宿亮(いぶすきりょう)、彼は見た目の通り真面目で優しく、人柄の良い人物だ



指宿「いつもごめんね、今日も練習に付き合わせちゃって…」


戸塚「別に、俺も好きでやっている事だし気にするな」



戸塚大地(とづかだいち)、指宿の中学時代からのチームメイトで、ポジションは外野


彼も指宿の人柄に魅かれた一人でもある


そんな二人も練習を終え、片付けを行っていたのだが…


指宿「はぁ…誰も練習に来ないね…」ハア…


指宿が思わず溜め息を漏らすのも無理はない


指宿が所属している野球部の多くのメンバーが自主練どころか練習にすら来ない時もある


しかもあと二週間ほどで夏の大会が始まろうとしている


戸塚「この時期ですら練習をしないんだ、大会なんて勝てるわけないだろうな」


指宿「うぐっ…やっぱりそうだよね…」ガクッ


戸塚「一生懸命しているお前の気持ちを考えると言いづらいが…このままだとどうしようもないままだ」


指宿「だよな〜…先輩も大概だけど、俺らの世代がなぁ…」


指宿の言う通り、指宿の世代はもの凄く不真面目な人材が集まっており、


練習に来ないのは当たり前、練習に出てもふざけるし、先輩や後輩には迷惑をかける…


戸塚「正直練習に出られた方が迷惑だ、アイツらのせいでどれだけ周りが振り回されているか」


指宿「で、でも大会も近いし、そろそろ最終学年にもなるし責任感が出たりとか…」


戸塚「その見込みはゼロに近いだろうな、それくらいで人は変わらん」


指宿「そっか…うーん、どうしたことやら…」
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