道化師とワルツを

□“それ”が見えたら、終わり。
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・入植時代

ビ−バー狩りの野営地として、町が設立。当時の住民九十一人がその冬全員姿を消す。痕跡は井戸小屋の血の付いた服のみ。


・1908年

鉄工場で復活祭のエッグハント、祭りの最中に謎の爆発事故。子供八十八人が死亡、死傷者は百人を超える。


・1935年

ブラッドリー・ギャングの惨殺事件。白昼堂々と指名手配犯五人が市民によって蜂の巣に。


・1962年

“黒酒場(ブラック・スポット)”焼き討ち。差別主義者が黒人のナイトクラブに防火。


・1988年

ジョ−ジ−・デンブロウ、行方不明に。痕跡は通りに夥しい血痕のみ。
1989年9月までに、ベティ・リプソン、ベロニカ・グローガン、エドワード・コ−コラガン、パトリック・ホックステッタ−失踪。



私は本から顔を上げて、両肘をついて暫し考え事をした。
その日、私は再来週にある社会科の授業で、デリーの町の歴史について発表する為に近所の図書館に来ていた。それで、町の歴史に関する本を何冊か見付けて読んでいたが、調べている内にこの町の異様な歴史と不可解な事件に違和感を覚えてきて、気になる点が次から次へと出て来たのだ。
一つ目は、この町では二十七年ごとに災害や事故、殺人や失踪事件が起きている。
二つ目は、子供が突然失踪し、その後無事に帰って来た者が一人もいない。
三つ目は、当時の事件の様子が描かれた絵に謎のピエロが必ずと言って良いほど描かれている。その名前は、“Pennywise the clown”…。

そして、2016年の現在。今年に入ってからデリーの町でまた子供達の謎の失踪事件が相次いで起こっている。私の学校でもクラスメ−トが何人か突然失踪してしまい、未だに見つかっていないのだ。そして、二か月前、私の兄が雨の日に行方不明になってしまい、それ以来家に帰って来ない…。

それは、私の誕生日の夜だった。その日、兄は学校の帰りに友達の家に遊びに行くから遅くなると言っていたから私と両親は家で兄の帰りを待っていたのだが、兄は夜になっても帰って来なかった。心配になった両親は兄の友達の家に電話してみたが、兄の友達は、兄は夕方の五時頃に帰ったからいないと言った。兄は、家に帰る前に私の誕生日プレゼントを買いに行くと友達に言って家を出たそうなのだ…。
その話を聞いた両親は、これはただ事じゃないと思い、警察に電話を掛けようとしたら、警察の方から先に電話が掛かってきた。電話に出ると、何と、警察から家の近所の通りに兄の通学カバンと帽子が転がっており、更に排水溝には兄の物と思われる、夥しい血痕が残されていたと話があった……。

私はギュッと目を瞑って、体を微かに震わせた。
お兄ちゃん、何処にいるの?プレゼントなんかいらないから帰って来てよ。私、お兄ちゃんがいなくて寂しいよ。また二人で一緒に遊ぼうよ。

お兄ちゃん、帰って来て………。
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