短編

□いつか花開く
1ページ/1ページ


白「あ、いたいた!あすかー!
飛鳥、今まで本当にありがとう!
おかげで、今までよりも
色んなことが出来るようになった!」
飛「……」
白「んー」


おもむろにポケットからコインを出す飛鳥


白「ん? なになに?」


飛鳥の指によって弾かれたコインは裏を上にして手の上に落ちた


飛「奈々未に言われたことをしただけだから
お礼を言われる筋合いはないよ
さよなら(ニコ)」

うわー!
飛鳥が喋ってくれた!!

白「今投げたのは何?」
飛「さよなら(ニコ)」
白「お金?
表と裏って書いてあるね!
なんで投げたの?」
飛「さよなら(ニコ)」
白「あんなに回るんだね!」
飛「指示されてないことはこれを投げて決める
今、あなたと話すか話さないか決めた
話さないが表話すが裏だった
裏が出たから話した
さよなら(ニコ)」
白「なんで自分で決めないの?
飛鳥はどうしたかった?」
飛「どうでもいい
どうでもいいから、自分じゃ決められない」








お腹が空いた
悲しい 虚しい 苦しい 寂しい
そんな日々だった

だけど
ある日、ぷつんって音がして
何も辛くなくなった

貧しい暮らしの中
親に売られた時でさえ
悲しくはなかった


その時は体に縄を巻き付けられて
おっきい男の人にどこかに連れていかれてた
行先なんて知らないし、別にどうでもよかった

深「あの、ちょっとよろしいでしょうか
その子はどうして縛られているのですか?
罪人か何かなのですか?」
「……。見てわかるだろ
ノミだらけできたねぇからだよ
それに、逃げるかもしれねぇしな」

スッ
深「こんにちは、はじめまして
私は深川麻衣と言います(ニコ)
あなたのお名前は?(ニコ)」
「そいつに名前なんかねぇよ
親がつけてねぇんだ
もういいだろ、離れろ(スッ)」

ばしぃ!!

橋「まいまいに気安く触らないでください」
「っち、なんなんだよテメェらは
このガキとおしゃべりしたけりゃ金払いな」
深「…(じーっ)」
橋「じゃあ、買いますよこの子
これで、足ります?」

ばっ チャリーン、ひらひら
「!?」

お金をまき散らしたその瞬間深川と橋本は飛鳥の手を取り走り出した

「あっ おい! 待ちやがれ」
橋「早くとった方がいいですよー
人も多いし風邪も強いのでー」
深「あ〜いいのかな〜
ごめんなさいね〜」
橋「いいの!」


橋「ダメだ
まいまい、ダメだよこの子
言われないと何も出来ない
食事だってそう
食べなさいって言わなきゃずっと食べない
ずっとお腹ならして」
深「まあまあ、そんなこと言わずに〜
私はななみんの笑った顔が好きだな〜」
橋「だって!
自分の頭で考えて行動出来ない子はダメだよ
危ない
1人じゃ出来ないんだよ、この子は」
深「じゃあ、1人のときはこの銅貨を投げて
決めたらいいわよ
ねー、飛鳥」
橋「まいまい!」
深「そんなに難しく考えなくていいじゃん
飛鳥は可愛いもの!」
橋「理屈になってないから」
深「きっかけさえあれば
人の心は花開くから大丈夫
いつか、好きな子でもできたら
飛鳥だって変わるわ、きっと」




白「きっと、飛鳥は心の声が小さいんだよ
んー、指示に従うことも大切な事だけど
あ! その、コイン貸してくれる?」
飛「え、うん」
白「ありがと!」

たったったっ

白「よし! 投げて決めよう!」
飛「何を?」
白「飛鳥がこれから自分の心の声をよく聞くこと!」

ピッーン
白石の指によって高く弾かれたコイン

白「うわぁ高く飛ばしすぎた!笑
よし! 表!表にしよ!
表が出たら飛鳥は心のままに生きる!」

ぱし!

白「取れた!
飛鳥はどっちだと思う??」

キャッチする瞬間は体で見えなかった
投げる時もなにか細工してるようには見えなかったし

白「いくよ、飛鳥」

ドキドキ

白「表だー!!」

表だとわかった瞬間飛び跳ねて喜ぶ白石

飛鳥の所まで行き両手で飛鳥の手を包み込む

白「飛鳥! 頑張れ!
人は心が原動力だから
心はどこまでも強くなれる!
じゃ、またいつか!」

走っていく白石の背中に向かって飛鳥が声をかける

飛「な、なんで表を出せたの?」
白「うーん、偶然だよ!
それに、裏が出ても
なんとでも投げ続けようって思ってたから!
えへへ笑
それじゃ、元気でー!またね!」



深「きっかけさえあれば
人の心は花開くから大丈夫
いつか、好きな子でもできたら
飛鳥だって変わるわ、きっと」

まいまい、こんな私でも花開く時が来るかな

…来るといいな
次の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ