短編

□帰りの時間
1ページ/1ページ


飛鳥side

学校から私の家までの10分間
たった10分だけど
私が1日の中で一番好きな時間

隣にはしーさんがいて
いつも道路側を歩いてくれる

荷物が多い時は持つよなんて言わずに
自然に持ってくれて
さりげない優しさやかっこいいとこが好き

しーさんが今日あったことを話して
わたしは相槌をうつ

会話らしい会話は無いけど
しーさんの声が好きだしいろんな表情が見れるから
相槌ぐらいが丁度いい

でも、あと少しでこの幸せは終わってしまう

……卒業

今年でしーさんはいなくなる
大好きな時間がなくなっちゃうんだ

寂しいな…。

そっとしーさんの顔を盗み見る
この綺麗な横顔も見れなくなるんだよね

高校三年生のしーさんと
高校一年生のわたし

しーさんが2年遅く生まれてたら
私が2年早く生まれてたら

考えたって意味が無いことはわかってる
でも、しーさんの隣にずっと居たいから

桜が咲く季節にならないで


白石side

授業が終わって
1年の教室まで飛鳥を迎えにいく

自分の教室を出てから飛鳥の家に着くまでの
少しの時間
私が1日の中で一番好きな時間

最初は飛鳥のことが心配で
一緒に帰ってたけど

いつからだろう
隣に飛鳥がいないと嫌だと思ったのは

私が一方的にいつも話してるだけだけど
飛鳥はちゃんと聞いてくれてる
その証拠に楽しい話だと笑うし
悲しい話だと眉毛を下げる

やっと自分の気持ちに気づいたのに
年の差って残酷だよね
あと少しで迎えにいくこともなくなっちゃう

私が卒業したら
飛鳥の隣には誰がいるんだろう

こんなことを考えるたびに
悲しくなって告白しようかと思う

けど、飛鳥を縛りたくないから

私は今日も
『飛鳥を守るしーさん』を演じる
次の章へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ